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2015年02月15日

[北山修の『DPP三角』をチーム医療で機能させるための問題点・注意点:3]

北山修の『DPP三角』をチーム医療で機能させるための問題点・注意点:3

精神科医・北山修はDPP三角で構成される精神医療の治療構造が、基本的憶測に基づくグループになってしまわないように、以下のような問題点・注意点を指摘している。

小此木啓吾の『A-Tスプリット』と臨床心理士の役割:1

北山修の『DPP三角』と小此木啓吾の『A-Tスプリット』:2

1.心理療法家(P)と患者(P)とが心理療法の中で話した『患者の私的・心理的な秘密』に関しては、患者の同意・許可がない限りは、医師にさえも話さないというルールを締結して、『患者の内面世界・過去のトラウマ的な記憶や感情』を話しやすい治療場面を整える。ただし、自傷他害の危険性や精神症状の悪化、自殺企図の恐れがある場合には、治療全体の責任者である医師にも『秘密の情報』を伝える可能性があることは患者に伝えておかなければならない。

2.患者の病態水準や事例(ケース)の深刻度に応じた『医師・心理療法家の役割分担と責任権限』をあらかじめ話し合って決めておき、治療上で『必要な情報交換』がいつでもスムーズかつ効率的に行えるようにしておかなければならない。

3.医師(D)の薬物療法と心理療法家(P)の心理療法を競争させたりお互いに嫉妬させたりしようとするような患者(P)の語りかけに影響されずに、『治療上のパートナーである医師(心理療法家)の方法論』については中立的な態度で患者に話すように努めること。患者の医師に対する不平不満に軽い共感を示すくらいは良いが、患者と一緒になって心理臨床家が『医師の治療法・薬物療法』に真正面から反対するのは治療的パードナーシップの崩壊にもつながる。

4.心理療法家(P)は患者が語る『薬物療法の感想・副作用の悩み・精神症状の経過』などについても共感的に傾聴することを心がけ、『投薬内容の変化に対する不安・恐怖・心細さ』などについても積極的にフォローすること。薬物療法について肯定的に語ることによる暗示効果についても配慮する。精神医療のチーム医療に参加している立場からは、薬物療法の全面否定のような極端な意見に傾かないようにすること。

5.薬物療法や医学的対処については、心理療法家(P)は『非専門家の立場』を貫くようにして、患者の質問・疑問に対して自分が直接答えないようにしなければならない。患者が薬や医療行為について疑問・不安を持っているような場合には、まず『担当の医師に相談したり質問したりしてください』といった回答をするようにして、心理療法家は心理社会的な側面における相談に従事するようにすること。

6.医学的な判断や医療の臨床経験が必要になってくる問題については、基本的に医師(D)が責任者となって対応するようにしなければならない。例えば、入院心理療法においても、『入退院の判断・外泊や外出の許可』をするのは心理療法家ではなく医師の役割ということになってくる。

7.治療効果の原因や功績については、『誰か一人だけの功績』にしてしまうと医師・心理療法家・治療スタッフの間で競争・嫉妬・対立が起こってしまう危険性がある。そのため、治療効果については『チーム医療全体の功績・貢献』として、関係者全員が肯定的に解釈してお互いの働きを認めていく必要性がある。

8.心理療法家(P)は、医師(P)から『心理療法・心理アセスメント』を実施するように依頼された場合であっても、それが『患者の不利益・心理的苦悩』につながる恐れが強いと判断される時には拒否することもできる。

9.DPP三角の複雑な三者の人間関係では、『不信感・嫉妬感情・被害妄想』などによって、お互いの信頼関係・治療意欲が損なわれてしまう危険性があるので、『また聞きの影響・間接的コミュニケーションによる誤解』をできるだけ減らすように努力しなければならない。例えば、心理療法家は患者から『医師に対して何かを伝えて欲しい』という依頼を受けた場合でも、『また聞きの影響・間接的コミュニケーションによる誤解』を避けるため、『医師に言いたいことがあるのであれば、医師との面談の時間にまずはご自分から伝えたほうがいいですよ』という対応をするのが原則である。

心理療法家(臨床心理士)の臨床実践家としての専門性が最も発揮されるのは『心理アセスメント(心理検査)』の分野であるが、心理療法家は心理検査(心理テスト)を通して『患者の病態診断・人格理解・生活状況や人間関係の把握・心理社会的ストレスの特定』を援助していくのである。

精神医療における心理アセスメント(心理検査)は、『患者が初めて来院した初診・初期の段階(大まかな病態水準やパーソナリティー、生活状況などの把握のための段階)』『心理療法や薬物療法を受けて一定時間が経過した段階(精神医療の効果・成果を測定するための段階)』で行われる。

患者と医療関係者・心理療法家(臨床心理士)との間に十分な『ラポール(相互的な信頼感・親しみの感覚)』が形成されていない段階では、『心理検査の目的と必要の説明+患者の動機づけの強化』に十分な時間をかけ、『インフォームド・コンセント(患者に十分な説明を行ってから同意を得た上での医療・検査)』を確実に実施していかなければならない。



posted by ESDV Words Labo at 16:11 | TrackBack(0) | き:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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