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2015年02月26日

[カール・ゴルトシュタイン(Kurl Goldstein)の全体説と『範疇的態度(カテゴリー的態度)の喪失』]

カール・ゴルトシュタイン(Kurl Goldstein)の全体説と『範疇的態度(カテゴリー的態度)の喪失』

神経心理学の非局在説として、J.H.ジャクソン(John Hugh-lings Jackson)のジャクソニスムがあるが、それと合わせてドイツの脳病理学者カール・ゴルトシュタイン(Kurl Goldstein, 1878-1965)H.ヘッド(H.Head)などが『全体論(各精神機能・各身体機能は脳の特定の部位の働きだけには還元できないとする説)』の立場から非局在説を展開した。

K.ゴルトシュタインは神経心理学の研究と関係する『脳損傷後遺症研究所』を創設して、心理学者のA.ゲルプ(A.Gelb)と一緒に脳病理学にゲシュタルト心理学の理論を持ち込んだ論文『脳病理学的症例の心理学的分析(Psychologitic Analysis Hirnpathologistic Falle)』を書き上げた。

この一連の論文では、心因性失明(精神的盲)や解離性健忘(健忘を伴う失語症)などの症例分析とその原因の理論的解明が注目されたが、ゴルトシュタインはその原因論において『非局在説(全体説)』を採用したのである。

脳損傷後の基本障害としてゴルトシュタインは『範疇的態度(カテゴリー的態度)の喪失』を定義したが、これは脳の特定部位の損傷によって特定の精神機能障害(身体機能障害)が起こるのではなく、カテゴリーを認識・構成して行動するための態度の全体が障害されるという理論を展開した。この範疇的態度(カテゴリー的態度)の喪失を軸にした心身機能障害の説明は、K.クライストらの『古典的局在説』を否定する『全体論的脳病理学』として対置されることになった。

厳密には、K.ゴルトシュタインは『脳の要素的機能の局在性』までは否定しておらず、『高次脳機能(思考・判断・計画・創造など)を司る脳機能の局在性・還元性』を否定している。ゴルトシュタインは脳損傷患者はどこの部位を損傷したかに関わらず、共通の基本的障害を示すことになると述べ、その基本的障害のことを『抽象的態度の喪失(物事を抽象化して思考する能力や態度の喪失)』と呼んだのである。

人間の精神が持つ『抽象的な思考能力(物事を抽象化・一般化して論理的に思考する能力)』『高次脳機能の中心』に置くこのゴルトシュタインの考え方は、構造主義の心理学者であるジャン・ピアジェにも似た考え方である。

posted by ESDV Words Labo at 15:46 | TrackBack(0) | こ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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