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2015年02月26日

[A.R.ルリヤ(Aleksandr Romanovich Luriya)の『力動的・機能系的な局在説』と高次脳機能の複雑性]

A.R.ルリヤ(Aleksandr Romanovich Luriya)の『力動的・機能系的な局在説』と高次脳機能の複雑性

神経心理学の機能局在説は、人間の心が複数の構成要素から組み立てられているという『連合主義心理学』との関係が深いのだが、こういった連合主義的な機能局在説を否定する20世紀の神経学者・心理学者としては、J.W.ブラウン(J.W.Brown)やソ連のA.R.ルリヤ(Aleksandr Romanovich Luriya,1902-1977)といった人たちがいる。

P.マリー(P.Marie)とH.ヘッド(H.Head)の神経心理学的な非局在説(全体説)

N.ゲシュヴィント(N.Geschwind)の離断症候群

J.W.ブラウンは階層的な発達理論の前提から、人間の言語の受容(理解)と表出(発話)は、脳の成熟に伴って階層的に発達すると考えた。言葉を話せないとか言葉の意味を理解できないとかいった様々な失語症の症状は、それぞれの発達的な階層における言葉の受容(理解)や表出(発話)の段階に過ぎないというのがJ.W.ブラウンの基本的な言語観なのである。

A.R.ルリヤは、精神現象について多様な構成要素から成り立っている機能系であると定義しており、協調的あるいは力動的(心的機能の葛藤)に働く各部の脳領域の複合体によって精神現象が成立することになると主張した。ルリヤは連合主義的な局在説に対しては批判的だったが、機能系としての精神現象が脳の局在的損傷によって障害されるということについては同意しており、ルリヤの理論は精神機能を系として捉える観点から『力動的な局在説』として解釈されることもある。

A.R.ルリヤの『力動的な局在説』では、一定の脳部位(脳領域)が担っている構成要素は、複数の機能系にまたがる多重役割的な構成要素に成り得るというのが独自の理論になっている。ルリヤの理論では精神機能の障害の持つ局在説的な意味は、『個別の症状』ではなく『複数の症状がまとまった症候群(シンドローム)』になるということである。

つまり、このルリヤの理論は部分的な脳損傷によって生じる症状が一つの症状だけではなく、『陰性症状(機能の喪失)・陽性症状(機能の解放)・代理的症状(補償の防衛機制の症状)』などさまざまな症状にまで及ぶ症候群になることを上手く説明しているのである。

現在の神経心理学では『運動機能障害・運動麻痺(感覚麻痺)・感覚障害』などの要素的な神経機能障害については、特定の脳部位(脳領域)の損傷と各症状が関連していることは科学的事実として確認されているのだが、思考・判断・創造・想像・計画といった『高次脳機能障害』については、特定の脳部位(脳領域)の損傷だけによってその障害のすべて(損傷部位と精神障害の内容の相関関係)を説明することは困難である。

自我意識や現実認識、創造力・想像力、計画性・未来予測、論理・計算などの『高次脳機能』が生み出している精神機能は余りに複雑で個別的であるため、『局在説-非局在説の二元論』の視点だけで割り切って考えられるものではない可能性が高いということもある。精神症状をどういった心理的構造や昨日水準で捉えるかによっても、機能局在説が当てはまるかどうかは大きく変わってくるので、機能と部分との相関関係がランダムで不規則的なものになりやすいのである。



posted by ESDV Words Labo at 15:51 | TrackBack(0) | る:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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