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2015年03月11日

[精神分析・精神力動論と『連続性の原理(continuity principle)』]

精神分析・精神力動論と『連続性の原理(continuity principle)』

精神力動(Psychodynamics)とは、S.フロイトの精神分析の“エス・自我・超自我の心的装置(精神機能)”を前提とする『力動論的観点(dynamic aspect)』に由来するもので、この観点に基づく『力動的心理学・力動精神医学』といった分野もある。一般的には、精神分析の動態的(ダイナミック)な精神構造論や精神機能論を前提としている心理学・精神医学のことを『力動的心理学・力動精神医学』と呼んでいる。

『エス・自我・超自我(欲求の充足と禁止)』『意識化と無意識への抑圧』など、“複数の心的な力(精神的な機能)”が作用してせめぎ合っているような状態が力動(ダイナミクス)であり、精神力動論とはそういった複数の心的な力の相互作用によって精神現象(精神症状)が作られているという見地なのである。

現在では複数の心的な力と力が作用して『葛藤(conflict)』するという意味での精神力動もあるが、より広範に精神分析の各種の基本理論に根ざした人間理解・精神症状の理解と治療的アプローチの方策をまとめて『精神力動論』と呼ぶことが多い。精神力動論の見地に立った異常心理学(精神病理学)の特徴の一つは、精神の正常性と異常性の間に境界線を設けないということがある。

精神分析医療を行うメニンガー・クリニックを創設した事で知られるアメリカの精神科医・精神分析家のカール・メニンガーは、精神疾患の病者と健康とされる健常者の精神状態(精神症状)は全くかけ離れたものではなく、正常から異常へのグラデーションのような連続性があると主張した。このように、精神の正常性と異常性とを完全に別物として区別せずに、一定のグラデーションのような連続性を想定する精神分析の人間原理を『連続性の原理(continuity principle)』という。

カール・メニンガーは、ジークムント・フロイトの無意識領域に抑圧された欲求が意識的な精神現象を根底において決定しているという『無意識の決定論』を前提にして、この無意識の決定論の作用によって精神疾患を持つ人と精神的に健康な人とが連続的につながっている『連続性の原理』を主張したのである。当時の精神分析の精神病理学では、重症度の高いものから順番に『精神病・境界例(精神病と神経症の中間的病態)・神経症・健常者』の連続性が想定されていた。

精神力動論に立脚する精神分析の連続性の原理が示唆する人間の特徴は、健常者であっても必ず『病的な心の働き・欲求・感情』を何かしら持っているということであり、正常な心理状態にある時には自我や超自我によって『病的・本能的な心の働き』が抑制・制御(コントロール)されたり調整・修正されたりしているだけだということである。

posted by ESDV Words Labo at 17:10 | TrackBack(0) | せ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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