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2015年03月12日

[精神分析(力動的心理学)の『局所論』の見地と『退行(regression)』の役割:2]

精神分析(力動的心理学)の『局所論』の見地と『退行(regression)』の役割:2

自我の過去の発達段階への『退行』は、精神の健康性や正常性を保つためにも必要なものであり、『精神機能の柔軟性・適応性・自由さ』を支えている。

だが神経症のように病的な心理状態になると、過去の特定の発達段階への退行が『固着』してしまう。人格構造の全体が長期的・ストレス反応的に退行してしまうことで、幼児的かつ非適応的な生活様式と対人関係が固定化(パターン化)されやすくなるのである。

精神分析(力動的心理学)の『局所論』の見地と『不適切な欲求』の抑圧:1

精神分析家のE.クリス(E.Kris)は、正常・健康な範疇にある退行(regression)の特徴として『一時的・意図的・随意的な退行+現実と想像上の退行を自由に行き来できること』を上げている。

具体的にいうと、親密な人間関係の中で冗談を言って笑ったり甘えてくつろいだりすること、映画鑑賞(ドラマ鑑賞)・読書などのコンテンツを通して、物語の刺激的な内容や理想的な人物に一時的に同一化してストレス発散をしたり満足感を覚えたりすることが、適応的な退行の典型的なあり方である。

恋人・家族・友達と楽しくリラックスして過ごしている時には退行しているが、会社や学校に出かけていけばその退行から現実世界に適応できる自我の状態に戻っていけるというのが正常な心理状態のあり方である。映画を見たり小説を読んだりしている時には、創作的な物語の世界観や魅力的な登場人物に没頭して想像的な満足・興奮を覚えているが、いったん現実の仕事や社交関係に戻る必要が出てくれば、もう映画や小説の影響を受けることなく普段の適応的な自分に戻って対応できるということである。

適応的な退行は、『心的エネルギー(意欲・活力・癒し)の補給』『公的世界と私的世界を区別する気分のモードの切り替え』といった役割を担っている。社会生活や人間関係に常識的に適応しながら、一時的・意図的・随意的な退行によって心的エネルギーを補給できる心的能力のことを『自我を支持する適応的退行(ARISE:Adaptive Regression In the Service of Ego)』と呼んでいる。

“神経症水準の非適応的な退行”では、楽しいはずの遊び・娯楽や親密な人間関係があっても、『不安感・罪悪感・恐怖感・強迫観念』などに襲われて安心して退行することができず、退行する場合には自分の意思・意図とは無関係な激しい幼児退行(現実に適応できないレベルの幼児的・感情的な退行)が起こりやすくなってしまう。

“精神病水準の非適応的な退行”では、自我機能が大きく低下して『エス(イド)』と呼ばれる無意識的欲求を抑圧することができなくなり、『人格構造の全体に及ぶ長期的・不随意的・不可逆的な退行(病態水準の深刻な退行)』が起こりやすくなってしまう。



posted by ESDV Words Labo at 18:54 | TrackBack(0) | せ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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