適応障害(Adjustment Disorder)の精神症状・身体症状と特徴的な性格傾向
適応障害(adjustment disorder)を精神症状に注目して分類する場合には、『抑うつを伴う適応障害』と『不安感(パニック)を伴う適応障害』に分けることができるが、抑うつ感・落ち込み・不安感・パニック以外にも、焦燥感や神経過敏性、自己不信(自己嫌悪)、恐怖感、緊張感のような情緒障害の症状が起こることがある。
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適応障害の代表的な精神症状と身体症状をまとめると以下のようになる。
適応障害の精神症状……抑うつ感・気分の落ち込み・絶望感・不安感・焦燥感・神経過敏・パニック・混乱・自己否定・自己不信(自己嫌悪)・緊張感など。
適応障害の身体症状……睡眠障害・食欲不振・倦怠感・疲労感・ストレス性の胃炎(胃潰瘍)・頭痛・めまい・吐き気・発熱・身体の振るえ・精神運動抑制(身体の動きの緩慢さ)など。
不定愁訴としての身体症状のみの訴えがあり、内科で医学的検査をしても原因がわからない場合にも適応障害と診断されることが多いが、心身の症状面では軽症うつ病とオーバーラップする部分も多い。
適応障害になりやすい人の性格傾向は、うつ病になりやすい人の病前性格として知られる“テレンバッハのメランコリー親和型性格”や“下田光造の執着性格”に似ていて、『几帳面・生真面目・責任感が強い・義務感に縛られる・他者に気配りし過ぎる・秩序志向性・我慢強い』などの特徴があるとされる。
抑うつを伴う適応障害は悪化すると、そのままうつ病の発症につながってしまうこともある。適応障害が原因となって発生する心身の不調、不定愁訴とも呼ばれることがある身体症状の異常が目立つ場合には、『自律神経失調症・心身症』といった非正式のアバウトな診断が下されることもある。
小児期の行為障害・夜尿症・習癖(指しゃぶり・爪噛み・抜毛癖のトリコチロマニア)なども、適応障害の心身症状の現れとして解釈されることもあり、適応障害は精神分析的に考えると『退行(regression)』の自我防衛機制と関係している側面があるとされる。