適応障害(Adjustment Disorder)を引き起こす要因と情緒面・行動面の障害
適応障害の各種の心身症状は、日常生活・職業活動・対人関係などを障害して一般的な社会生活に適応することが極めて困難になるが、その生活面・人間関係面の障害は大きく分けると『情緒的な障害』と『行動的な障害』に分けることができる。
また適応障害の『情緒的障害の側面』によって、本人自身が内的に苦悩したり内的な不適応感に陥ったりすることもあれば、『行動的障害の側面』によって客観的な不適応行動・問題行動によって、周囲に迷惑をかけたり自分が社会生活を送れなくなったりすることもある。
適応障害(Adjustment Disorder)の精神症状・身体症状と特徴的な性格傾向
情緒的な障害……感情的な興奮、抑うつ感や不安感、気分障害的(うつ病・双極性障害的)な感情の不安定、睡眠障害、摂食障害(食欲不振)、動悸やパニック、頭痛や肩こり、倦怠感や疲労感、希死念慮や自殺企図などで、『内的な苦悩・不適応感』につながりやすい。
行動的な障害……衝動的・攻撃的な行動(喧嘩・無謀運転など)、アルコールや薬物、ギャンブルなど各種の依存症(嗜癖)、虚言癖、社会的規範の無視・違反、借金や返済の拒否、ひきこもり(対人関係の拒絶)などで、『外的な不適応行動(社会生活への不適応)・周囲の他者への迷惑』につながりやすい。
客観的な不適応行動の事例……出社拒否、不登校、家庭内暴力、アルコール依存症、薬物依存症、対人トラブル、借金、法律違反(無謀運転)、喧嘩など。
適応障害の患者は自分自身で精神科・心療内科を受診することもあるが、それ以上に家族や上司、恋人、友人が『本人の不適応行動・迷惑行為・心身の不調』などを心配して、本人に心療内科の受診を勧めたり、本人と一緒に診療に訪れたりすることが多い。
適応障害(adjustment disorder)は、『個体の適応能力(ストレス耐性・問題解決能力)が平均よりも低い場合』か『生活環境に過大なストレス因子が発生した場合』に発症しやすくなる。
個体の適応能力(ストレス耐性・問題解決能力)が下がる要因としては『身体疾患・精神疾患・パーソナリティー障害・心身のハンディキャップ』があり、生活環境に過大なストレス因子が発生する要因としては『戦闘・拘禁(刑務所)・強制収容所・過度の監視や管理・慣れない海外への移住』がある。
一般的な社会生活や人間関係で不適応状態を引き起こしやすい要因としては、『職場の人間関係・異動や転勤・昇進や左遷・定年や引退・仕事量や責任の増大・近親者の死・夫婦不仲・離別離婚・失恋・空の巣症候群・受験・就活や就職・医療におけるICU症候群(CCU症候群)・外科手術の手術反応・災害・がんの末期・傷害・火傷・限界状況』などを想定することができる。
価値観やライフスタイルの多様化、社会構造や情報環境、ネット環境(コミュニケーション環境)の複雑化などによって、かつてあった画一的な発達課題や価値規範が通用しづらくなっており、各人の社会生活や人間関係、労働環境への適応に困難(生きづらさ・不器用さ・なじみにくさ)を感じる人が増えている状況がある。
個体の生物学的な成長・老化やライフサイクルにおける役割・立場の変化は、『個人の各発達段階における適応方略』と密接に関係しているが、複雑化・多様化・専門化が進む現代社会では『他者と横並びではない自分独自の適応・価値観』が求められるような場面も多くなっている。