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2015年04月14日

[ジョン・ボウルビィ(John Bowlby,1907-1990)のモーニング(喪)の四段階論と対象喪失の受容と回復]

ジョン・ボウルビィ(John Bowlby,1907-1990)のモーニング(喪)の四段階論と対象喪失の受容と回復

モーニングの心的プロセスが、愛情・依存の対象と別れる死別だった場合には特に『喪(喪の仕事)』と呼ばれ、生き別れだった場合には『悲哀(悲哀の仕事)』と呼ばれることがある。モーニングの喪の仕事の心的過程では、悲哀や苦痛だけではなく、怒り、絶望、後悔、未練、執着、償い、謝罪などさまざまな感情や気分、訴えが綯い交ぜ(ないまぜ)になるのである。

外的対象喪失と内的対象喪失:モーニングワーク(喪の仕事)

イギリスの精神分析家ジョン・ボウルビィ(John Bowlby,1907-1990)は、愛着(attachment)の研究で知られるが、対象喪失の後に起こるモーニングの心的過程を『4段階』に分けて理論化している。J.ボウルビィは対象喪失と相関した一連の心的過程を『モーニング(mourning)』と定義し、悲哀の心的過程の中で体感する落胆・絶望・苦悩の情緒については『悲嘆(grief)』と呼んだ。

1.モーニングの第一段階

近親者の死や恋人からの別れの申し出、突然の事件事故・災害などに遭遇して、『急性ストレス反応』を起こして、自分がどうしていいか分からないパニック状態になっている段階。

パニック(混乱)や興奮に襲われる情緒的危機の段階であり、本人は冷静な思考力や適切な判断力をほぼ喪失していて、『不安感・恐怖感・無力感・心細さ』の中でこれからどうすればいいのか必死に模索している。周囲の人たちの情緒的な支持や実際的な援助が必要とされる段階である。

第二段階

愛着・依存を感じていた人物を失ってもまだ諦めきれず、その人物に対する愛着が残っている段階である。この段階では失ってしまった人物を、何とか取り戻したいと思って数ヶ月〜数年間にわたって思慕したり追い求めたりすることがあり、その思慕・執着が社会規範から逸脱して行動化すると『ストーカー・刑事犯』になってしまうリスクもある。

ジョン・ボウルビィはこの第二段階を『抗議(protest)』の段階と呼んだ。愛着の対象がいなくなったという分離に対する不安が起こるのだが、この『分離不安』を経験することは、発達早期の母子関係においては依存対象の喪失に耐えて自立していく精神発達の要因にもなる。

喪失した愛着の対象を何とか取り戻そうとしたり、保持し続けようとしたりする『保持の段階』としての側面も持っており、失った相手を何度も思い出して夢想に浸ったり、別れた相手がまだ自分のことを好きなのではないかと思って何とかして再会・説得しようとしたりする段階でもある。愛着・執着・とらわれの心理に影響されているのが『抗議・保持の段階』であるが、モーニングの心的プロセスの進展はこの『執着心の段階的な緩和・消失』として理解することができるだろう。

第三段階

愛情・依存を感じていた人物を、もう永久に失ってしまったのだ(もう今後もずっと取り戻すことはできないのだ)という現実を認める段階である。対象の断念によって本格的な悲哀・悲嘆の感情反応やそれに耐えられない抑うつ・ひきこもりが起こってくることから、第三段階は『絶望の段階・抑うつの段階』として整理することができる。

『悲嘆・絶望・無力感』に覆われた情緒的体験は、それまで心理的に結合して自分を支えてくれていた対象を永遠に失ってしまったことに対する癒し難いストレス反応である。情緒的な落ち込みや心理的な苦悩だけではなく、免疫・バイタリティなどの生物学的な生命力も全般的に低下しやすくなり、時にさまざまな感染症や身体疾患なども誘発する危険性があるほどである。精神神経免疫学の分野では、対象喪失の強烈なストレスが発がんリスクと相関している可能性が指摘されている。

第四段階

それまで愛着・依存を感じていた対象から本当に気持ちが離れていく段階であり、精神的にリラックスしたり執着心がなくなって自由で柔軟な感覚を味わえるようになり、『心理的な回復・立ち直り,人生と自己アイデンティティの再構築』のプロセスが進められていく。

ジョン・ボウルビィは、それまで依存していた対象に対する執着心を弱めて、新しい対象を発見したり新たな自己アイデンティティの再構築を進めていくこの第四段階を、過去の愛着対象から離れていくという意味で『離脱の段階』と呼んだ。

モーニングワーク(mourning work)と呼ばれる喪の仕事は、それまで結びついていた愛着・依存の対象を失うという『ショック・否認の段階(第一段階)』を受けて、どうにかして対象を取り戻そうとする『抗議・保持の段階(第二段階)』へと移行し、どうにもならない喪失の現実を認めてひどく落ち込む『絶望・抑うつの段階(第三段階)』に進むことになる。

しかし、最終的にはそれまで強く依存して執着していた対象を失ったという現実を認め、その対象から気持ちが離れて自由な心理状態や新たな対象関係(自己アイデンティティ)を回復していく『離脱・再建の段階(第四段階)』に至る。こういった一連の喪の仕事の心的プロセスを通して、人間は大切なものを失ってもなお生きようとする力、新たな対象と関わりを持とうとする力を立て直すことができるのである。

ジョン・ボウルビィの『モーニング(喪)の四段階説』と類似した心的過程の説明理論として、臨死患者(末期患者)が自らの死を受容していく心的プロセスを説明した女性精神科医エリザベス・キューブラー・ロス(Elisabeth Ku"bler-Ross, M.D.,1926-2004)『死の受容段階論(死の受容の五段階論)』がある。

エリザベス・キューブラー・ロスの死の受容段階論

第一段階……死の否認・隔離の段階

第二段階……怒り・抗議の段階

第三段階……取引き(交渉)の段階

第四段階……抑うつの段階

第五段階……死の受容の段階

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posted by ESDV Words Labo at 17:12 | TrackBack(0) | ほ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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