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2015年04月23日

[ジークムント・フロイトの“エルンスト坊やの観察研究”と“不在‐再会”の図式]

ジークムント・フロイトの“エルンスト坊やの観察研究”と“不在‐再会”の図式

イギリスの精神分析家のジョン・ボウルビィ(John Bowlby,1907-1990)は、対象喪失の後に起こるモーニング(喪)の心的プロセスについて4段階論を用いて説明した。

しかし、精神分析・心理学の分野に『モーニング(喪)』という概念そのものを持ち込んだのは、精神分析の創始者のジークムント・フロイトである。

S.フロイトは対象喪失によるモーニング(mourning)の図式として『不在と再会の図式』を考えていたが、この発想はジョン・ボウルビィの四段階説にも引き継がれている。S.フロイトは生後18ヶ月(1歳6ヶ月)のエルンスト坊やがしていた『フォルト・ダー(fort da)』という遊び(日本のいないいないばぁに似たような遊び)を見ていて、『不在と再会の図式(あるいは消滅と再現の図式)』の着想を得ることができたのだという。

1歳半のエルンスト坊やは、紐のついた木製の糸巻きをベッドの下に投げ入れて見えないようにしてから、『フォルト、フォルト(あっち、あっち)』と言い、次にその紐を引っ張りながら糸巻きがベッドの中から少しずつ出てくると、『ダー(いた)』と嬉しそうに笑顔で声を出したのだという。

このフロイトが『フォルト・ダー(fort da)』と名づけたエルンスト坊やの遊びは『不在と再会(消滅と再現)』を示す象徴的な遊びであり、母親が長い時間にわたって側にいない分離不安の強まった時にこの遊びが行われることが多かった。エルンスト坊やは母親がいなくて一人ぼっちの時に、フォルト・ダーと同じ消滅と再現の図式を持つ『自己鏡像を用いたいないいないばぁの遊び』をすることも多かったという。

鏡に映っている自己像を消滅させたり出現させたりする遊びである。フロイトはこの自己像の鏡像を用いた“いないいないばぁの遊び”について、自我が受動的に体験させられた『母親喪失(母親不在)のストレス』『消滅と再現の図式を作り出す能動的な遊び』を通して解消したり馴れさせたりするものであると解釈した。

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posted by ESDV Words Labo at 08:38 | TrackBack(0) | え:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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