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2015年04月23日

[ジークムント・フロイトのモーニングワーク(喪の仕事)と躁的防衛]

ジークムント・フロイトのモーニングワーク(喪の仕事)と躁的防衛

フォルト・ダーも自己鏡像の遊びも、『人為的(擬似的)な対象喪失』を作り出した上でその悲哀・苦痛に自我を慣れさせていき、一時的な不在状況の対象喪失に適応させるといった意味合い(効果)があるのである。

ジョン・ボウルビィもこのS.フロイトのエルンスト坊やの遊びが示す『不在と再会・消滅と再現の図式』を、モーニング(喪)の心的プロセスの理解に応用しており、愛情・依存の対象の『不在(absence)』『現存(presence)』によって人間の心理状態は大きく変化するのだと述べた。

ジークムント・フロイトの“エルンスト坊やの観察研究”と“不在‐再会”の図式

母親がいなくなった母親の不在の段階では、まだ母親と再会できるという期待が残っており、子供は『分離不安』と『再会の期待』の葛藤に晒されることになる。この後に、母親と再会することができれば対象喪失の悲哀・絶望は起こらないが、もう二度と会えないという状況を認識した時には耐え難い“対象喪失(object loss)の悲哀・絶望”に襲われることになる。

その不在と現存の葛藤状況を踏まえて、ジョン・ボウルビィが認識していたモーニング(喪)の心的プロセスは“不在‐分離不安‐再会(期待)−喪失−絶望”であった。

モーニング・ワーク(喪の仕事)というと、亡くなった人を偲んだりその故人について語り合ったりして懐かしむ行為、あるいは夢想の中での再会・再生を願ったりしながらも最後には受け容れていく行為として認識されやすい。

しかし、ジークムント・フロイトが想定した“モーニング・ワーク(喪の仕事)”は『死者に対する憎悪・怒り・死の願い』といったネガティブな感情の反省・想起をも含んだものであり、死者に対して悪意や敵意を抱いたこともある自分のネガティブな側面について後悔・反省したり償いの気持ちを持ったりすることなのである。

S.フロイトは、喪失した対象との間にあった憎悪・怒り、死んだ対象に対して持っていた悪感情・敵意(死の願い)なども率直に認めて、それを後悔したり反省したり償いたいと思ったりしながら、傷ついた心を整理していくことこそが“モーニング・ワーク(mourning work)”の本質だと考えていた。

つまり、モーニング・ワークとは本来、失った対象との間にあった“ポジティブな係わり合いの部分”だけではなくて“ネガティブな係わり合いの部分”も含めて想起・整理しながらその悲しみと後悔・罪悪感(償いの思い)を受け容れていく総合的な心的プロセスなのである。

人間は対象喪失を経験した時に、その悲しみや苦しみ、絶望を感じないようにするために、自分が愛着・依存を感じていた対象を絶対的に失ってしまった事実そのものを無意識的なハイテンションの中で否認する傾向がある。この対象喪失による悲哀・苦悩・絶望などのモーニング(喪)を回避するための自我防衛機制のことを『躁的防衛(manic disorder)』と呼ぶ。躁的防衛とは対象に対して持っていた愛情・愛着・依存・信頼などをハイテンションな気分で全否定することによって、何事もなかったかのように平静な心理状態を保つための防衛機制である。

1960〜1970年代にかけて精神分析の研究分野では『対象喪失の研究』が積極的に行われることになったが、代表的な対象喪失やモーニング(喪)として想定されていたのは『配偶者と死別した人』『親を失った子供(現代では両親が離婚した子供)』などであった。

乳幼児の対象喪失の研究として有名なものには、ジョン・ボウルビィの『母性剥奪(maternal deprivation)』の研究やルネ・スピッツの『施設症候群・依託性うつ病』の研究などがある。

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posted by ESDV Words Labo at 08:40 | TrackBack(0) | も:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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