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2007年05月14日

[結婚心理学(marriage psychology)と結婚モラトリアム(marriage moratorium)]

結婚心理学(marriage psychology)と結婚モラトリアム(marriage moratorium)

価値観の多様性とライフスタイルの個別化が進む現代社会では、結婚(婚姻)というライフイベントの持つ意味づけが大きく変化し、結婚したいというモチベーションの強弱に個人差が見られるようになってきた。戦後間もなくから高度経済成長期頃までの日本では、20代〜30代の結婚適齢期には結婚に対するモチベーションを持つのが当たり前であり、大多数の人は「社会的信用を得るための必然的な通過儀礼(イニシエーション)」として結婚することを選択してきた。伝統的な権威(イエ制度)や社会的な慣習(結婚に対する世間体)が生きていた時代には、学校を卒業すれば正社員として就職し結婚して子どもを持つことがある種の社会規範として機能していたので、多くの人には結婚をしないという選択肢を想定することが出来なかったといっても良い。

個人の価値観やライフスタイルを理由にして「結婚をしない・婚期を遅らせる・子どもを作らない・同性愛を選ぶ」という選択が出来るようになったのはここ10数年の話であるが、結婚をするかしないかの選択の自由が確保されたことで結婚心理学はより複雑な発展と経過を辿ることになった。「結婚の選択の自由」が拡大するにつれて、個別的な結婚観や人生哲学、セクシャリティの内容をより丁寧に考慮する必要が強く意識されるようになったのである。

現在の結婚心理学(marriage psychology)では、「結婚の主体的な選択」と「価値観・ライフスタイル・性的指向性(セクシャリティ)の多様性」が前提されており、結婚前の生活状況(人間関係)から結婚中の生活状況(夫婦関係)の理解と対応が主要な研究領域になっている。男性と女性の結婚に対する価値観の違いや男女のジェンダー(社会的性差)から生まれる結婚生活(夫婦生活)の問題、夫婦の性的関係(性交渉や妊娠出産)にまつわる悩みなども結婚心理学で考察する対象である。

「配偶者との離婚」を決断することが比較的容易な国や地域では、離婚に関係する心理状態や離婚を円滑に進めるための問題解決(離婚相談的な対人援助)までもが結婚心理学の対象になっている。反対に、イスラム教圏や儒教圏など離婚に対する禁忌(タブー)の意識が強い地域や、経済的事情や共同体の慣習により離婚することが難しい開発途上国では、離婚に至る夫婦関係や「別れたい」という男女の心情が問題になることは少ない。

結婚心理学について簡単にまとめると、「結婚・離婚(別離)・配偶者との死別という重要なライフイベント(人生の出来事)」を巡る人間関係(心理状態)の変化や配偶者とのコミュニケーションの方法を研究することで、結婚生活という新たな状況への適応を進めて、長く連れ添うことのできる円満な夫婦関係を実現しようとするものである。

一定の結婚適齢期になったら結婚することが当たり前と考えられていた時代の結婚心理学では、交際相手との結婚を決断することが出来ない『結婚モラトリアム(marriage moratorium)』が社会不適応(社会的責務からの逃避機制)の問題として取り上げられていたが、結婚選択が自由化した昨今では結婚モラトリアムという用語自体が余り使われなくなっている。平均初婚年齢の上昇(晩婚化)や未婚化とも関係している「結婚モラトリアム」とは、異性と結婚できるだけの社会経済的な能力や知的能力・身体的能力(性的機能)を持ちながら、敢えて結婚を決断・選択せずに恋愛関係や独身生活を延長している状態を言う。

結婚モラトリアムが生じる原因としては、『束縛の多い結婚生活を、自己の人生(自由)の可能性の限定と考える価値観』『育児をして家庭生活を維持するための社会経済的コストの増大』『結婚を勧める伝統的価値観(社会的圧力)の衰退』『都市生活の発展や恋愛の自由化に伴う結婚するメリットや実際的必要性の減少』『若年層の男女の子どもを産み育てることへの関心の低下』『結婚生活以外の趣味や娯楽の増大』『他者(家族)に生活時間や価値観に干渉されたくないというシングルライフ志向』『過去の家族関係で受けたトラウマ(心的外傷)による家族形成への否定的感情(恐怖・不安・無気力・怒り・憎悪・軽蔑)』『恋愛関係や性的能力に対する劣等コンプレックス』『男女の結婚相手に求める条件のミスマッチ(結婚したいと思えるような魅力ある相手がいない)』『実家の親へ過度な愛情や理想を感じる感情的固着(マザーコンプレックス・ファザーコンプレックス)と精神的自立(親子の心情的分離)の不足』などを考えることができる。



posted by ESDV Words Labo at 22:44 | TrackBack(0) | け:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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