双極性障害(躁鬱病)の病前性格と環境要因・ストレス要因
双極性障害もうつ病と同じく『病前性格』として、エルンスト・クレッチマーの“体型性格理論の循環気質”、フーベルトゥス・テレンバッハの“メランコリー親和型性格”、下田光造の“執着性格”、ツァーセンらの“マニー型性格”などが想定されているが、近年の生物学的精神医学の統計研究では『うつ病・双極性障害の発症と病前性格との間には有意な相関関係は認められない』という研究結果もでてきている。
クレッチマーの循環気質の特徴は、肥満体型で陽気で親しみやすくて社交的であるが時に気分の波によって落ち込むというものである。テレンバッハのメランコリー親和型性格や下田光造の執着性格に共通する性格傾向としては、『几帳面・生真面目・他者配慮の強さ・秩序志向性・完全主義傾向・義務感や責任感の強さ・熱心さや凝り性』などを上げることができる。
性格類型として特に双極性障害(躁鬱病)との相関関係が強いと推測されていたのは、ツァーセンらが指摘した“マニー型性格(manic character, 躁型性格)”であり、その性格傾向の特徴は『行動力の高さ・自立性の強さ・大胆な思い切りの良さ・多弁で饒舌・エネルギッシュ・意志の強さ』などであった。
遺伝要因と比較すると環境要因(ストレス要因)は、『素因ストレスモデルにおける双極性障害発症のトリガー(きっかけ・引き金)』として影響を及ぼすことが多いと考えられている。特に『配偶者・親しい家族との死別』及び『人生の危機に直結する財産(老後の為の貯蓄)の喪失』は、双極性障害の発症の誘因(トリガー)になりやすい。
それ以外にも『失業・離婚・病気・過労・転勤・昇進・妊娠出産・人間関係のトラブルなどの各種のストレス要因』が、それまでの生活環境や心理状態を大きく変化させることによって、精神病の発症リスクを高めると推測されている。『気質と性格・心理的な脆弱性・加齢による老化・身体の健康の悪化』などの素因に対して、上記したような環境要因(ストレス要因・心理的原因)が加わることによって、双極性障害はその発症リスクが高くなってしまうのである。