乳幼児精神医学・児童精神医学2:乳幼児に対する非言語的コミュニケーションを用いた診察・心理療法
乳幼児・児童精神医学の治療介入モデルは、『正常な発達の促進・回復』と『異常な発達の抑制・矯正』に基づくモデルであるが、それだけではなく発達障害などに付随する適切な療育を受けられず周囲に受け入れられないために起こる『二次障害の防止』に力が入れられている。
乳幼児精神医学・児童精神医学1:子供の正常な発育・発達プロセスの理解
乳幼児期にある子供はコミュニケーション能力が未熟であり、特に言語的コミュニケーション能力がほとんど発達していないため、『非言語的コミュニケーション(ノンバーバル・コミュニケーション)』を活用した子供の患者の情報収集や心理療法的なアプローチが大切になってくる。
子供の発達段階や言語能力に対応した非言語的コミュニケーションを工夫していく必要があるということだが、実際の診療の場面では子供の動き・表情・話し方などをしっかりと見る『行動観察法』も有効である。
言語的コミュニケーションを用いない子供向けの心理療法的アプローチとしては、『遊戯療法・箱庭療法・絵画療法(芸術療法)』などを積極的に用いていくことになるが、精神分析的療法の子供への応用としては『転移感情・逆転移感情の分析(治療者・患者の子供がお互いに対して感じた率直な感情の意味・原点などの分析)』にも有用性が認められるケースは多い。
乳幼児精神医学の創始者として知られるのは、盲目乳幼児の発達プロセスの研究から乳幼児研究をスタートさせた、アメリカの女性児童精神科医・精神分析家のセルマ・フライバーグ(Selma Fraiberg,1918〜1981)である。セルマ・フライバーグは目の見えない乳幼児の臨床研究と情緒障害に対する早期治療プログラムの実践を行いながら、『精神分析的な乳幼児期における無意識の幻想・表象の理論』の体系化を推し進めていった。