乳幼児精神医学(infant psychiatry):乳幼児の問題行動・精神症状の多軸診断システム
乳幼児期にある子供の精神医学的な『診断・心理評価・治療』には、成人とは異なる各発達プロセスに応じた注意と配慮が求められるが、『親(養育者)との関係性・養育環境の質・非言語的コミュニケーション・情緒的な反応性』などを多面的かつ総合的に見て適切な判断をしていく必要がある。
乳幼児精神医学(infant psychiatry):親子関係を踏まえた子供の問題・症状の評価
乳幼児期の子供の『問題行動・不適応・精神症状』は、以下の各種の要因が相互的に複雑に絡み合うことによって発生するケースが多い。
1.遺伝的・生理的要因
2.身体的・器質的要因
3.家庭環境・親子関係の要因
4.保育園・幼稚園・小学校などの社会的環境(友達関係)の要因
乳幼児精神医学(乳幼児精神保健)には、DSM-W(DSM-5)などに類似した操作的かつ網羅的な精神疾患・発達障害の診断マニュアルとして『多軸診断システム』が整備されている。アメリカの乳幼児精神保健の学会“Zero to Three(0〜3歳まで)”でも、以下のような多軸診断システムを作成している。
乳幼児の精神保健と発達障害の診断基準の多軸診断システム(Zero to Three作成)
第1軸:主要診断(primary diagnosis)……精神医学・臨床心理学などの専門的知見や評価尺度を応用した主要な精神疾患・問題行動の診断軸
第2軸:関係性障害分類(relationship disorder classification)……親(養育者)と子供との情緒的・機能的な関係性
第3軸:医学上・発達上の障害と状態(medical and developmental disorders and conditions)……医学的な身体疾患や臨床発達心理学的な発達障害の診断とその具体的な状態。
第4軸:心理社会的ストレッサー(psychosocial stressors)……家庭・保育園・幼稚園・学校などでの適応状態と心理社会的ストレスの強度
第5軸:機能的情緒的発達水準(functional emotional developmental level)……精神機能や情緒機能の発達水準と標準的な発達プロセスと比較した場合のズレ・偏り