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2015年09月26日

[M.マーラーの正常な共生期とD.W.ウィニコットの母親の原初的没頭]

M.マーラーの正常な共生期とD.W.ウィニコットの母親の原初的没頭

乳幼児期の子供は、『生活・保護(愛情)をほぼ全面的に親に依存しなければならない』という発達上・能力上の前提条件があるため、『親(養育者)と子供との相互作用+親(養育者)と子供との情緒的な関わり合い』の相対的な影響度(インパクト)がかなり大きくなりやすい。

A.ポルトマンの『生理的早産』の生物学的概念では、人間の新生児は他の哺乳類と比較して極めて『未熟かつ無力な状態』で生まれてくるとされるが、完成していない可塑性に飛んだ部分が多いというヒトの新生児(赤ちゃん)の特徴が『出産後の知能(能力)の飛躍的な発達』を可能にしている。

人間の新生児・乳幼児は、生理的早産で生まれて未熟かつ無力な状態にあるので、ほぼ全面的に『親(養育者)の保護・愛情・世話』に依存しなければならないが、乳幼児期の発達心理学研究で成果を残したイギリスの精神科医のマーガレット・マーラーD.W.ウィニコット『乳幼児と親を不可分なペアとして認識する考え方』を提示した。

女性精神科医のM.マーラーは乳児のこの発達段階を『正常な共生期(normal symbiotic phase:3〜4ヶ月)』としたが、正常な共生期にある母親と乳児は『幻想的な母子一体感+強固な愛着(アタッチメント)』に包まれていて、それぞれ相手と自分が区別される『自立的な個人』としては認識していない状態にある。

乳幼児期の発達心理学において権威的な位置づけにあるD.W.ウィニコットは、この乳児の母子一体感(母子のペアとしての認識)について、『単独の赤ちゃんというものは存在しない。ただ一組のお母さんと赤ちゃんが存在するだけである』というように述べている。

D.W.ウィニコットは乳幼児を実際に育てている母親(近年は父親も含めるべきだが母親と比較して乳児期の子供の専従的な育児経験とその観察記録がほとんどない)は、乳幼児(我が子)だけにその愛情と関心が集中して、情緒的な愛着によって母親と乳幼児が強く結び付けられているとした。幻想的な母子一体感の心理状態について、ウィニコットは『母親の原初的没頭(primary maternal preoccupation)』という概念で表現している。

原初的没頭の状態にある母親は、乳児が微笑すれば自分も微笑み、乳児がぐずついて不機嫌になれば自分も不安なイライラとした気持ちになってしまう。反対に、乳児も母親が笑顔で優しく語りかけて、母乳(ミルク)を与えてくれたりスキンシップを取ってくれたりすると、嬉しがって笑顔になる。

母親が不安になって暗い顔をしていたりイライラして短気に怒ったりしていると、乳児も不安感・緊張感が高まって抑うつ的になったり怒りやすく(泣き喚きやすく)なったりもするのである。早期発達段階における原初的没頭の心理状態においては、母親の側でも乳児(子供)の側でも相手が自分とは異なる別人(個人)であるという認識がほとんど成り立たず、幻想的な母子一体感の中でお互いに強い相互作用を与え合っているのである。

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posted by ESDV Words Labo at 04:53 | TrackBack(0) | ま:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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