親の子育てを自分も繰り返してしまう『世代間伝達(intergenerational transmission)』:良い子育てと悪い子育て(虐待)の反復
精神分析的な母子関係の理解では、親(養育者)が自分が育てられたような方法・態度で、自分の子供を無意識的に育ててしまうという『世代間伝達(intergenerational transmission)』の傾向性が指摘される。
精神分析の『臨床乳児(clinical infant)』と身体医学・保育・心理学の『被観察乳児(observed infant)』
この育児における世代間伝達は、良い方向で作用すれば『子供の倫理的な態度・人生を楽しむ姿勢・良好な親子関係・向上心や忍耐力・規律正しさ』などにつながることもあるが、悪い方向で作用すれば自分が虐待(暴力による懲罰・しつけ)を受けて育てられたから自分も子供に虐待をしてしまうといった『虐待の連鎖』を生んでしまうこともある。
育児における世代間伝達の心理メカニズムは、乳幼児(わが子)の言動・態度・反応が『母親自身の乳幼児期の無意識的な記憶+非言語的なコミュニケーション(情緒的経験)』を強く刺激して蘇らせてしまうということであり、『蘇った子供の育て方(しつけ方)の記憶・情動の表現』が無意識的に子供に向けられて再び何度も繰り返してしまう(反復してしまう)ということである。
乳児に情緒的・精神的な問題が発生した時には、母子カウンセリングにおいて『母親自身の乳幼児期の記憶・感情(自分が親からどのようにして育てられ躾をされたか・そういった子供時代の自分がどのような感情や考えを持っていたのか)』にも焦点を当てた共感的な理解と無条件の肯定的受容をしていくことが大切である。
母親の心の中にある『子供(インナーチャイルド)の自我状態』を理解して支持・共感をしていくことによって、インナーチャイルドの癒しあるいは大人の自我状態への統合が起こりやすくなり、虐待の連鎖(好ましくない育児態度の負の連鎖)を事前に予防しやすくなるという効果を期待することができる。