広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorders:PDD)の『ローラの3つ組』:乳幼児期の発達障害
広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorders:PDD)は、知能・言語・コミュニケーション・社会性・想像力などの能力の発達が全般的に停滞する先天性の発達障害であり、『自閉症スペクトラム』の発達障害の概念や問題とも重複している。
広汎性発達障害(PDD)の中核的障害として『自閉症性障害(Autistic Disorders)』があるとも言えるが、自閉症研究者のローナ・ウィングの名前から、『ウィングの3つ組』とも呼ばれる広汎性発達障害の典型的な3つの特徴は以下のようなものである。
1.対人関係の障害(社会性の障害)
2.コミュニケーションの障害(言語機能・ノンバーバルな意思疎通の障害)
3.イマジネーションの障害(こだわり行動・興味の偏りや固執)
広汎性発達障害では、他者との対人関係を構築するための『心の理論(相手の内面や意図を推測する心的能力)』が障害されていることが多く、他者への興味関心が欠如していたり過剰だったりする。他者と適切に関係を築いてやり取りをしたり、集団生活に適応するために場の空気を読んで協調したりする『社会性』が低いために、様々な状況や人間関係で不利益を被りやすくなったり不適応に陥ったりするのである。
コミュニケーションの障害には、言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーション(ノンバーバル・コミュニケーション)の障害の両方が含まれるが、その障害の本質は『相手が伝えようとしている話の内容・意図・要求』を汲み取って理解して反応することが著しく苦手ということである。そのため、一方的に自分の言いたいことだけを伝えようとするコミュニケーションの失敗に陥ったり、言葉の外の態度などでほのめかされている『相手の気分・感情』を読み損なって失礼な対応や嫌われる発言をしてしまうという問題が出て来る。
イマジネーションの障害には、興味の範囲が偏っていて想像力が乏しいために、同じ行動を何度も機械的に繰り返す『常同行動』、特定の刺激(光・音・動き)や行動だけにこだわって飽きることなくいつまでも繰り返す『こだわり行動・固執性』が見られやすくなる。イマジネーションの想像力が低いことによって、『自分の予測していた事柄(いつも通りの形式的・習慣的な行動)』と『自分の予測とは異なる事柄(いつもとは違う突発的・変更的な行動)』とのギャップを理解・納得できずにパニック状態になってしまうようなこともある。