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2015年10月20日

[アナクリティック・ディプレッション(anaclitic depression,依託抑うつ):母親から引き離された乳児の症状]

アナクリティック・ディプレッション(anaclitic depression,依託抑うつ):母親から引き離された乳児の症状

ウィーン生まれのアメリカの精神科医ルネ・スピッツ(Rene Spitz,1887-1974)は、母性的養育・愛情やスキンシップの欠如によって引き起こされる乳幼児の『施設病(ホスピタリズム)』について研究した人物として知られる。

施設病(ホスピタリズム)の乳幼児には、『情緒障害(精神症状)・身体の発育不良・感染症の罹りやすさ・免疫力の低下』などの様々な症状が出てくるが、その主要原因は母性的な養育環境・愛情や保護を失った『母性剥奪(mother deprivation)』である。

乳児が母親から3ヶ月以上にわたって引き離された場合に発生してくる、うつ病の精神運動抑制(精神活動の活発性・高揚性の低下)にも似た精神症状が『依託抑うつ(依託性抑うつ)』と訳される『アナクリティック・ディプレッション(anaclitic depression)』である。

アナクリティック・ディプレッションは全ての乳児に起こる病的な精神状態ではなく、母性剥奪(mother deprivation)が起こる前に少なくとも『6ヶ月以上の良好な母子関係』があった乳児のみに起こる。つまり、アナクリティック・ディプレッションは『母性的養育・愛情や保護の心地よさや安心感』を一定以上の期間にわたって体験したことのある乳児だけに起こるのである。

母親から引き離された乳児の精神状態の変化は以下のような感じで起こってくる。

母親の姿が見えなくなり引き離された直後には、少しずつ泣きやすい性格傾向への変化が見られ、些細な刺激に反応して泣き叫んだり怒ったりという気難しさが出てきて、『睡眠障害・体重減少』などの病的変化も目立ってくる。

しかし、母親から離されて3ヶ月くらいの時間が経過すると、明らかに周囲の状況に対する反応性が減退して、思い通りにならなくて泣いたり怒ったりといった感情表現もしなくなり、無表情でうつろな目つきをするようになってくる。ルネ・スピッツはこの刺激に対する反応性と精神運動性が抑制された乳児の病的状態(うつ病にも似た状態)を『アナクリティック・ディプレッション(anaclitic depression)・依託抑うつ』と名付けたのである。

アナクリティック・ディプレッションの状態になっても、再び母性的養育環境(愛情・保護・スキンシップなど)を回復して上げれば、乳児の精神運動抑制や抑うつ感の症状は軽減・消失していく。この研究は、生後1年以内の良好な母子関係と母性的養育が、乳児の健康な心身発達に対して極めて重要な役割を持っていることを示唆している。

アナクリティック・ディプレッションは、最低6ヶ月以上の良好な母子関係を経験したことのある乳児だけに起こる病的状態といったが、そういった母子関係のなかった乳児が母親と引き離された場合にはより重篤な症状を示す『施設病(ホスピタリズム)』を発症してしまうことが多い。

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posted by ESDV Words Labo at 23:29 | TrackBack(0) | あ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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