分離不安障害と母子関係:乳幼児期の不安関連の障害1
女性の児童精神科医・精神分析家のマーガレット・マーラー(Margaret Scheonberger Mahler,1897-1985)は、児童精神臨床の経験に基づいて『乳幼児の早期発達論(分離‐個体化理論)』を提唱した。
その早期発達論において、生後4、5ヶ月頃〜36ヶ月頃までの『分離‐個体化期』には、母親や家庭環境から離れることで『分離不安(separation anxiety)』が生じやすくなるとされている。
母親と自分が別の人格を持つ個人だと認識できるようになり、母親から離れて一人で探索的行動ができるようになってくるのが概ね“3歳頃(36ヶ月頃)”であり、母親からある程度物理的にも距離的にも離れていられる能力・意識を獲得することを『個体化(individuation)』と呼んでいる。
分離不安障害(separation anxiety disorders)は、分離・個体化期において個体化の能力が十分に発達できなかった場合に起こる幼児期・児童期の不安障害の一種であり、『分離不安の過剰』によってさまざまな身体症状・精神症状が出て来るのが特徴である。
子供の発達年齢・発達段階から推測される『個体化の能力・分離不安の強さ』から著しく逸脱していて、各種の不安症状が強い場合に『分離不安障害』あるいは『愛着障害(attachment disorders)』だと診断されることがある。
分離不安障害の症状としては『母親と分離していることの苦痛・不安』を中心として、『登園拒否・不登校・睡眠障害・悪夢・夜驚症・頭痛・腹痛・めまい・吐き気(自律神経失調症的な症状)』があるが、分離不安のストレスによって頭痛や腹痛、下痢、吐き気といった身体症状が出やすい傾向が見られる。