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2015年12月18日

[青年期精神医学における『思春期・青年期』の年代区分:青年期危機説・青年期平穏説]

青年期精神医学における『思春期・青年期』の年代区分:青年期危機説・青年期平穏説

思春期・青年期の年代(発達年齢)は、以下の4つの年代区分に分けて考えることができる。

青年期精神医学と『思春期・青年期』に特有の発達課題

1.前青年期(preadolescence)……小学校高学年(10〜12歳頃)の世代で、同性同士の友達で集まって悪ふざけやいたずら、喧嘩などをしやすい『ギャングエイジ』とも呼ばれることがある。小学校低学年では男子と女子が一緒になって遊ぶことも多いが、この年代では男子は男子と仲間集団を作り、女子は女子と仲間集団を作るという特徴がある。異性を意識し始めることによってかえって異性との交流を恥ずかしく感じ遠ざけやすくなる。急速な身体的発達に対して、精神(情緒・コミュニケーション能力)が追いつきにくい年代でもある。

2.青年期前期(early adolescence)……中学生(12〜15歳頃)の世代で、第二次性徴期の始まりと身体的な性差の自覚の強まりによって、児童期の自己イメージを保てなくなり、それ以前よりも異性・恋愛を意識しやすくなる。両親(母親)との心理的距離が開きやすくなり、親から過度に近づかれたり干渉されたりすると強い反発・抵抗を示す子供も増えてくる。同世代の友人関係の心理的・発達的な重要性が高まり、『親友』と呼べるような存在ができたり、親友・仲間集団とプライベートな秘密を共有したりするようになる。

3.青年期中期(middle adolescence)……高校生(15〜18歳頃)の世代で、親への情緒的な依存性・結合性が弱まって、『自己(自分自身の存在・関係・目標)への関心』が非常に高まってくる。自己に対して過大評価あるいは過小評価をしやすく、異性関係(恋愛関係)への興味・欲求が強まる一方で、ささいなことにも悩みやすく傷つきやすい過敏な感受性を持ちやすくなる。

同性同士の付き合いは維持されるが、実際に恋愛をする友人も増え始め、同性よりも異性への関心が強くなりやすい。『異性にモテるかモテないか(今風にいえばリア充か非リア充か)』によって自己評価の揺れやコンプレックスの増減が起こりやすくなるが、社会経済的な能力(感情制御・対人評価の能力)が未熟であるため、恋愛をしても長続きはしにくい。

4.青年期後期(late adolescence)……大学生(18〜22歳頃)の世代で、自分がどのような人間であるかどういった他者と関わっていきたいのか、人生でどんな目標や職業意識があるのかといった『自己アイデンティティー』がかなり確立してくる段階である。

青年期特有の浮遊感・流動性・衝動性のようなものが落ち着いてきて、社会や経済、人間関係における自分の位置づけがわかってくる年代でもあり、『将来の社会経済的自立・職業選択』に向けた準備が整い始めてくることが期待される段階でもある。異性との恋愛関係においても『安定した充実感・将来性のある関係』を構築・維持しやすくなり、この世代で築かれた恋愛関係の中には将来的に結婚・出産などへと発展していくものも出て来る。

青年期が精神医学的に安定した時期なのか危機が起こりやすい時期なのかには、対立した二つの見方がある。

体型性格理論で知られるエルンスト・クレッチマーは、青年期は些細なことでも傷ついたり悩んだりして精神的に不安定になりやすく、精神疾患の発症リスクも上がるという『青年期危機説』を唱えた。

反対に、アメリカの心理学者のオウファーやロールシャッハ・テストの研究で知られるワイナーは、青年期はそれ以降の発達時期と比較して友人関係・学校生活が充実しやすく、精神疾患や自殺のリスクも格段に低くなるとして『青年期平穏説』を唱えている。

青年期精神医学の臨床上(治療)の対象となる10代〜20代前半の患者に見られる心理的問題としては、『暴力や反抗・気分や感情の不安定さ・自己評価の低下・自己破壊的衝動(自傷行為・漠然とした希死念慮)』などがある。

しかし、アメリカで行われた大規模な統計調査の結果、青年期の人はそれ以降の年代の人と比べても、『精神疾患・自殺の発生率』が低く、平均的には青年期の人は精神的に安定している(嫌なことやストレスも多いが学校・友人関係・異性関係をそれなりに楽しんでいる)ということが分かっている。『青年期危機説』は、現代の精神医学の臨床実践ではあまり重要視されていない(思春期・青年期だからといって特別に精神的に不安定になりやすく精神疾患を発症しやすいとは考えられていない)と言えるだろう。

社会的精神発達論で知られるE.H.エリクソンは、青年期の発達課題や心理的苦悩として『自己アイデンティティーの確立+モラトリアムの遷延』を強調した。だが、これらの自己アイデンティティーにまつわる発達課題は経済的に発展していて個人の自由・人権が保護されている豊かな先進国(近代国家)に特有のものであって、個人の自由・人権・豊かさが守られていない途上国・独裁国などでは自己アイデンティティーの確立やモラトリアムの延長というものが、青年期に目立って現れるものではないという見解も有力である。

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posted by ESDV Words Labo at 10:28 | TrackBack(0) | せ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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