スクールカウンセラー(SC)とは何か?4:スクールカウンセラーの任務と心理化・精神医療化の問題
スクールカウンセラーは子供(児童生徒)が直面している心理的・社会的・対人的(集団的)な問題の解決を促進するために、『生徒本人・保護者・先生・関係者』と関わりながら仕事をすることになるが、その仕事には高度な対人コミュニケーションのスキルと臨床心理学をはじめとする心理学全般の高度な専門性が求められることになる。
スクールカウンセラー(SC)とは何か?3:スクールカウンセリングの研究委託事業といじめ問題
スクールカウンセラーには精神医療分野で働いている臨床心理士と同様に、心理アセスメント(心理査定)の実施と解釈に関する専門的な知識・技能・経験が必要になるが、その心理アセスメントはいわゆる『心理テスト(心理検査)』に限定されるものではない。児童生徒の問題と関係している人との『診断的・治療的な心理面接』を繰り返すことによって得られる情報・知識を総合的に解釈し、『問題状況・精神状態の見立て』ができる能力のことなのである。
クライエントの子供(児童生徒)の問題解決と心理的成長を促進していくことがスクールカウンセラーの第一の職務であり役割であるが、『児童生徒(本人)・他の生徒・保護者・先生・地域社会』と連携したり協力したりしながら問題解決及び心理的成長を進めていくことになる。
スクールカウンセリング事業は、心理面接・カウンセリングだけで成果を上げれば良い個人プレイの事業ではなく、『学校教育・友人関係・家庭生活・親子関係』との両立や連携を前提とする集団プレイとしての側面を濃厚に持っている。
そのため、スクールカウンセリング事業の発足当初には以下のような職業領域の棲み分けを意図したような『スクールカウンセラー(SC)の任務・役割・職分』が構想されていた。
1.学校臨床心理士は、現場の教師の行っているカウンセリング(教師のカウンセラー的活動)を援助をしても、それに取って代わろうとするものではない。
2.地域の実態と現場の実状を総合的に判断して、柔軟に関わること。
3.児童生徒と直接的に関わることは充分に配慮し、担任等の補佐に徹することを第一義的に考えること。
4.校内関係者の話し合いや研修会の開催など、学校内の相談活動を活性化させるよう努力すること。
5.学校組織・校内分掌・生徒指導係の役割や機能などに精通し、学校関係者との連携・協力体制のあり方を明確にすること。
6.学校外の地域関連機関(教育委員会・医療機関等)との連携について配慮すること。これら社会的資源の活用のために、各都道府県臨床心理士会のコーディネーターとの連絡を密にすること。
7.臨床心理士の業務の一つである臨床心理的地域援助のあり方に、留意すること。
8.狭義の守秘義務を前面に出すのではなく、学校全体で守秘義務の大切さを考えていくことを念頭に置くこと。
スクールカウンセラー(SC)の原理的問題・欠点として指摘されていることに、『生徒児童(子供)の悩みの過度の心理化・精神医学化』と『スクールカウンセラーの体制化による第三者性・外部性の確保の難しさ』がある。これは児童生徒の利益・希望を常に第一として問題に対応していかなければならないという、心理臨床的アプローチの原点にも関わる問題である。
児童生徒の悩みを精神疾患だとか発達障害・学習障害だとかの文脈で過剰に解釈して、心理的要因以外の社会経済的要因が軽視されてしまうこともあるが、安易に精神医療に繋げすぎてしまう事(薬物療法などの化学的・生理的な対処法の偏りすぎてしまうこと)には一定以上の弊害があることも忘れてはならないだろう。