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2016年01月17日

[テオドール・アドルノの『否定弁証法』と『同一性‐非同一性』の原理]

テオドール・アドルノの『否定弁証法』と『同一性‐非同一性』の原理

新マルクス主義やニューレフト(新左翼)運動に大きな影響を与えた『フランクフルト学派』を代表する社会学者が、マックス・ホルクハイマー(Max Horkheimer,1895-1973)テオドール・アドルノ(Theodor Ludwig Wiesengrund Adorno, 1903-1969)である。

マックス・ホルクハイマーとテオドール・アドルノは共著『啓蒙の弁証法』を通して、近代的な啓蒙主義(道具的理性)を批判する『批判理論』を掲げて、マルクス主義の実践的かつ倫理的な発展を目指した。テオドール・アドルノは自然と他者を支配・搾取してきた近代社会の原動力である『理性(道具的理性)』のネガティブな側面に着目して、『否定弁証法』という独自の批判的な思考形態を提唱した。

マルクス主義的な思想家集団から始まったフランクフルト学派だったが、そこにはマルクス主義(共産主義)だけではなく、G.W.F.ヘーゲルの弁証法やフロイトの精神分析などの理論も融合されるようになり、近代社会全体の発展・倫理の可能性を探求する社会思想の複雑性が生まれていた。

テオドール・アドルノが否定弁証法を構想する契機となったトラウマ的な体験として、ナチスドイツ政権下の『アウシュヴィッツ体験(強制収容所・大量虐殺の危機の体験)』があり、アドルノは個人の独自性・個別性(個人の人格・人生の個別的な価値や権利)を抹殺して人間という画一的な原理に回収していく『同一性』を恐れた。

アドルノの『同一性‐非同一性』の思想的概念は、現代社会における個人主義や個性の尊重ともつながる部分がある。同一性とはアウシュヴィッツやファシズムなどの個人の危機的事態に照らせば『人間(一般性・画一性・物質性)』のことであり、非同一性とはそういった全体主義的な人間の抑圧・抹殺に抗する『個人(独自性・人格性・精神性)』のことである。

アウシュヴィッツ体験やファシズムという危機的事態は、『独自的・精神的な個人(個体)という非同一性』『画一的・物質的な人間(国民)という同一性』の中に呑み込まれていく事態であり、哲学や芸術の感動を生み出す主体は、いつの時代にあっても非同一性(独自性)に根ざしたものだったのである。

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posted by ESDV Words Labo at 08:41 | TrackBack(0) | あ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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