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2016年06月25日

[老年期精神医学と老化による心身の衰え・喪失1:脳の器質的変化]

老年期精神医学と老化による心身の衰え・喪失1:脳の器質的変化

老年期精神医学は、『老年期』の発達段階にある高齢者の『心理状態・発達課題・精神病理』を対象にした理論研究や臨床実践(精神医療)を行っている。現在は高齢の人の人格・尊厳・自意識などに配慮してかつてのように『老人』という言葉はあまり用いられなくなってきており、一般にマスメディアを中心として『高齢者』という言葉が用いられている。

現代における老年期の定義は概ね『65歳以上』とされているが、平均寿命の上昇や健康年齢の延長によって『老年期・高齢者の定義』は今後も引き上げられる可能性があり、現在でも現代において老人と呼ぶべき年齢は『後期高齢者の75歳以上』であるといった意見もある。

一方で、動物(生命)に必然的な『老化』を隠蔽するかのようなこの言葉の変化が、『人間の老い・衰退・死の現実(不可避な老衰と死)』を見えなくして『若さへの執着』を生んでいるという批判もある。老年期や老人という概念には確かに明るくてポジティブなイメージが乏しく、『老化による心身の衰え・死の接近(人生の最終期)』をどうしても自覚させられるような圧迫感や暗さがある。

老年期では生理的・最終的には『身体・精神の機能低下という衰え』は回避できず、あらゆる面における老化が様々な心身症状を生みだして、治療そのものが難しい事例(体力低下で手術できない・薬の副作用に耐えにくい等)も増えてくる。しかしネガティブな老化の現実に打ちのめされるだけではない、老年期は『豊富な人生経験と人間関係・人生観と世界観の成熟と達観』によって自分の人生全体の総決算・回顧を行う統合と納得の時期にしていくことが一つの課題になるのである。

老化による精神機能の衰えの原因は『脳の器質的変化・情報伝達速度の低下(脳機能の低下)』であり、脳内のニューロン間の化学的・電気的な情報伝達が遅くなることによって、一般に物事を記憶したり情報処理して判断したりするスピードが遅くなって精神疲労が起こりやすくもなる。認知症(アルツハイマー病)を発症していない正常範囲内の老化であれば、脳機能が低下するといっても『記憶・注意・思考』が少し落ちるくらいで、かつて『ボケ・痴呆』と呼ばれたような認知機能の大幅な低下や見当識障害が起こるわけではない。

老年期に精神機能の低下をもたらす原因は『脳の器質的変化』だけではなく、『さまざまな喪失体験による自己評価(社会的・対人的・能力的な存在価値の自覚)の低下』もある。老年期は今まで当たり前のように持っていたモノ・地位・役割・関係性などが、どんどんとこぼれ落ちるように無くなっていく『喪失の時期』でもあり、『健康・社会的役割・職業と収入・家族(子供)・友人知人』が段階的に失われて失望や落胆、孤独や寂しさ、無力感を味わわさせられやすいのである。

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posted by ESDV Words Labo at 00:14 | TrackBack(0) | ろ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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