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2016年08月12日

[EU(欧州連合)の世界連邦国家建設の理想と現実:20世紀の冷戦の終焉と世界情勢の変化]

EU(欧州連合)の世界連邦国家建設の理想と現実:20世紀の冷戦の終焉と世界情勢の変化

20世紀の冷戦体制の一翼を担ったソ連・東欧の『共産主義・社会主義の政治体制』は、民衆による信頼や合意を喪失して民衆を抑圧し苦しめたという意味では、『全体主義・独裁体制・先制主義(デスポティズム)の恐怖政治』と同類のものになってしまった。共産主義革命によって、資本主義の支配や先制的支配から解放されて自由・平等になったはずの人民が『恐怖の情念・自由の抑圧・飢えの苦しみ・人間不信(密告社会)』を味わわされる羽目になったのである。

ソ連はなぜ崩壊したのか?2:計画経済の失敗と飢え・自由の抑圧と密告社会

アメリカとソ連が対峙する冷戦体制が崩壊して、一時期は世界で唯一の超大国(スーパーパワー)となったアメリカが世界各地に影響力と軍事拠点を拡大して反米政権・石油資源国に対する内政干渉を繰り返していった。

だが、アメリカは『湾岸戦争・米国同時多発テロ(9.11)・アフガン戦争・イラク戦争・アラブの春(リビアのカダフィ独裁政権打倒)・シリア戦争』などを経験していく中で、『中国の大国化・ロシアとの対立』と合わせて超大国としての影響力を相対的に落としており、アメリカとEU諸国は『テロとの戦い・イスラーム圏との不協和音(イスラム過激派の反米的な思想・攻撃)』に疲弊してきている現状がある。

21世紀の国際情勢と世界秩序を大きく概観すれば、2016年現在では『米国と中国との実力の接近,中国の核心的利益の主張と海洋利権の紛争』『日本の超高齢化と経済停滞による影響力低下,安倍政権によるアベノミクス・改憲など改革路線』『欧州連合(EU)の加盟国増加と南欧の財政危機と英国のブレグジット(EU離脱)』『イスラーム圏の反米・反資本主義の過激化とIS(イスラム国)の誕生』『中東・アフリカの続発する戦争と難民・移民の増加』などのコンセプトによって理解することが可能だろう。

一時期は、加盟国を増加させて世界情勢への影響力を高めるドイツ・フランスが主導する『EU(ヨーロッパ連合)』が、地政学的版図の拡大と移民政策の加速によって欧米の政治経済体制や自由民主主義の啓蒙と相性の悪い『トルコをはじめとする親欧米のイスラーム圏』を包摂して呑み込むのではないかという楽観も囁かれた。

EU(ヨーロッパ連合)の理念や実現は、哲学史上の思想と重ね合わせれば、インマヌエル・カント『世界連邦国家構想』のコスモポリタニズムとも連動している。EUのような世界連邦国家建設のプロセスが、国民国家の枠組みを超え、戦争・テロ・ヘイト思想を廃絶した『新たな次世代の国際社会の法・倫理・秩序・連帯』をもたらすのではないかとの期待も持たれていた。だが、(2016年現在から見た)ここ数年の世界情勢の動きはそういった世界連邦の理想論や楽観論に冷水を浴びせかけるような厳しいもの(対立・闘争・憎悪を煽りやすいもの)になってきている。

だが、ギリシャやイタリア、スペイン、ポルトガルなど『EU内部の財政危機問題』が起こったり、イギリスが国民投票で『EU離脱(ブレグジット)』を決定したり、フランスを中心として『アラブ系移民のテロ事件,テロを受けたイスラーム差別や極右の移民排斥運動』が起こったりして、EUの理想的・未来的な国家連合の先行きに暗雲が立ち込め始めている。EU加盟に積極的と見られているトルコの政情も、イスラム回帰を進める『エルドアン政権』の元で不安定化しており、世俗主義の軍部が起こしたクーデターが鎮圧される騒擾事件が起こったばかりである。

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posted by ESDV Words Labo at 14:33 | TrackBack(0) | い:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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