DSM-5の『ディメンション診断(多元診断)』とDSM-W-TR以前の『多軸診断』
2013年出版の『DSM-5』では精神疾患(精神症状)やパーソナリティー障害(人格障害)の重症度をパーセンタイル(%)で段階的に表示する『ディメンション診断(多元診断)』が導入された。
DSM-W以前は、精神障害・人格障害・身体疾患の一覧表を呈示する『カテゴリー診断学』を前提とした網羅的かつ診断的な『多軸診断』が採用されていた。だが、DSM-5の多元診断(ディメンション診断)では、自閉症スペクトラム・双極性スペクトラムに代表される各疾患単位や各パーソナリティ障害で健常・軽症・重症の細かな段階がある『スペクトラム(連続体)』が想定されているのである。
各種の精神疾患・パーソナリティ障害・発達障害の重症度(レベル)を『パーセンタイル表示(%表示)』で表現することによって、個別の症状の特性や重症度に対する精神科医(専門家)の共通理解を促進することができるメリットがある。認知行動療法や論理療法では昔から、思考・認知の記録表における『自己評価方法(気分が最高の時を100%、最悪の時を0%にして評価するなど)』でパーセンタイル表示が採用されてきた経緯もあり、専門家にとっては応用の効きやすさのある方式でもある。
DSM-W-TRまでのT〜X軸にわたる多軸診断は、その網羅性とマニュアル的な診断のしやすさにメリットがあり、クライエント(患者)がどのような病理的な精神状態にあるかを把握しながら、同時に『身体医学的・神経医学的な診断』を的確に下していくというものであった。
例えば、日常生活で対象が特定できない慢性的な不安・手足の振るえ・動悸・パニックなどで悩んでいるクライエント(患者)は、“第T軸”において『全般性不安障害・パニック障害』などの診断を受けるが、それだけではなく“第V軸”で身体疾患の基盤がないかを身体医学的・神経医学的な診断で同時にチェックしていくことになる。