精神医学の診断的面接はどのように行われるか1:クライエントの心理的資質
精神医学の診断は『記述的診断』と『精神力動的診断』を組み合わせることによって、クライエント(患者)の心理社会的な状態像を理解して、今後の治療方針の選択を含む『見立て』をすることができる。
現代の精神医学の診断と治療ではクライエントを網羅的かつ統合的に理解するために、その原因を多角的に考える『生物−心理−社会モデル(bio-psycho-social model)』が採用されている。
初回面接(インテイク面接)では、クライエント(患者)が精神科医と治療同盟(作業同盟)を構築していくだけの『精神機能の正常性・治療的対話の応答性』がどれくらいあるかのチェックも行われる。精神科医やカウンセラーの考える治療方針に協力的・参加的であるかどうかと合わせて、心理アセスメントにおける診断的面接と心理検査(心理テスト)に協力的かどうかということも重要になる。
特に精神科医(心療内科医)の想定する治療アプローチには、必然的に向精神薬を処方する『薬物療法』が含まれてくることも多いので、患者が薬を服用する際に医師が経過を観察しながら指定した用量・用法をきちんと守るかどうかの『服薬順守性』も見ていくことになる。
治療同盟(作業同盟)を締結できるだけの精神機能や応答能力があるか、心理検査(心理テスト)を適切な方法や順序で実施できるか、薬物療法における服薬順守や経過報告ができるかといった精神科医療の面接は、『治療方法の選択・治療方針の策定・治療による経過と予後の見通し』などに大きく関係してくるのである。
精神科医療の診断的面接や治療方針の実施がスムーズに行きやすいかどうかは、クライエント(患者)が心理テスト・治療・カウンセリング的な対話に前向きで参加的かどうか、自分自身の心理状態や記憶・感情にどれくらいアクセスできるかという『心理的資質(psychological mind)』とも関わっている。
クライエントが自分の抱えている問題や苦悩に対して、どういった病識(自己理解)・治療方針に対する理解を持っているのかが大切になってくる。精神分析をベースとした『力動的精神医学』の治療方法に対する適性では、自分の抱える心理的問題をどのくらい深く情緒的・内省的に理解して言語化できるかが問われることになるが、精神分析のような高度な言語・概念の知的なやり取りをするには一定以上の『自己洞察・言語運用・内省と対話・想像と連想の能力』が必要になってくるのである。