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2016年10月18日

[自我の自律性とパーソナリティーの健康度1:パーソナリティーの機能・水準]

自我の自律性とパーソナリティーの健康度1:パーソナリティーの機能・水準

精神医学の診断的面接や心理アセスメントでは治療方針の適切な選択のために、クライエントの情報や体験談(エピソード)を集めて整理していく。クライエントの心理アセスメントで最も重要な情報の一つとして、『パーソナリティー(人格構造)の機能と水準』があり、このパーソナリティーに関する知識と情報は力動的精神医学(精神分析)の心理評価にもつながっている。

現実適応や対人関係と相関するパーソナリティー(人格構造)の機能水準を測定する際には、精神分析家L.ベラック(L.Bellak)などが開発した『自我機能の評価尺度』が用いられることが多い。自我機能の評価尺度は総合的なものであり、対面式の診断的面接だけではなく、SCT(文章完成法)やロールシャッハテストなどの投影法を含めた『テストバッテリー』を組んで実施していくことになる。

心理テスト(心理検査)にもパーソナリティー検査(人格検査)の区分はあるが、パーソナリティーの機能水準を測定する場合には『パーソナリティーの健康度・適応性・豊かさ』などが主要な問題になってくる。パーソナリティーの健康度や正常性の分かりやすい指標として『自我の自律性(autonomy)』があるが、この自我の自律性によって心理療法(カウンセリング)の効果を高める作業同盟(治療同盟)も結びやすくなる。

自我の自律性(autonomy)というのは、『内面・外部のマイナス要因』から大きな悪影響を受けずに自律的(自立的)に正常に機能することのできる自我の性質である。自我が受けやすい内面と外部のマイナス要因には、『内的な不安や恐怖・罪悪感・対人的なストレス・職業面のストレス・衝動(欲求不満)の高まり』などがある。そして、自我の自律性が維持されている限りは、これらのマイナス要因があったとしても、『パーソナリティー・精神機能の正常性』が脅かされることは殆どないのである。

自我の自律性によって『知覚・認知・言語・思考・記憶・生理機能・運動能力』などは概ね安定的なパフォーマンスが一貫して保たれているのだが、統合失調症やうつ病(気分障害)、不安障害をはじめとする精神疾患が発症すると自我の自律性が低下・麻痺して『病的な精神症状・機能障害』が目立ってくる。

特に、統合失調症や脳の器質的障害においては『現実認識能力(現実吟味能力)の低下』によって、認知や知覚の機能に障害が起こり、幻覚・妄想といった陽性症状が出現してくることもある。統合失調症やうつ病のような精神病水準にまで至らない各種の精神疾患・精神障害(かつて神経症と呼ばれた精神疾患)においても自我の自律性が崩れてしまうことは少なからずある。

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posted by ESDV Words Labo at 08:51 | TrackBack(0) | し:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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