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2016年10月18日

[自我の弾力性とパーソナリティー障害(人格障害)の影響2:自我機能論]

自我の弾力性とパーソナリティー障害(人格障害)の影響2:自我機能論

強迫観念・強迫行為に囚われる強迫性障害、各種のパーソナリティー障害によって、この『自我の弾力性』が障害されてしまうことがある。強迫性障害や強迫性パーソナリティー障害では、馬鹿げた観念や不合理な行動に過剰に囚われてしまうことで、思考・行動パターンががちがちに一貫して固定されて(毎日儀式的・規則的な行動しかできなくなって退行的な遊びや娯楽をするどころではなくなり)、自我の弾力性を失ってしまうケースが多い。

自我の弾力性と退行・快感原則による回復1:自我機能論

妄想性パーソナリティー障害や統合失調性パーソナリティー障害(シゾイド・パーソナリティー)では、中心的症状としてある『被害妄想』が邪魔をして、退行による遊びや快感原則による気晴らしを楽しむような気分にはなれず、無防備に退行・快感原則の中に入ってしまうと他者から弱みを握られて脅迫や侵害・干渉を受けるのではないかという猜疑心が強くなりやすい。

回避性パーソナリティー障害の人も、退行的な遊び・楽しみを満喫すると後になって『重い責任・負担』がのしかかってくるのではないかという不安や構えがあるので、自我の弾力性は一般的に低くなりやすい特徴を持っている。

人間の社会生活や精神活動に『不安・緊張・恐怖・葛藤』はつきものであるが、そういった一時的(暫時的)な精神の乱れに遭遇したとしても、自我の弾力性(ARISE)が適切に機能している限りは、自我を楽しませたり休ませたり、想像的な物語の世界を活用したりすることによって『回復・再適応』をすることができるのである。

想像的な物語の世界を活用するというのは、簡単にいえば『小説・映画・漫画・アニメなどの創作物からの自己肯定的・物語的なイマジネーション』によって自分のネガティブな感情体験を処理するということであり、物語的・共感的なカタルシス(感情浄化)によって精神状態を整えることでもある。

創作物や物語のイマジネーションを借りて、登場人物に共感したりカタルシスを体験したりしながら、自分の内面世界にある悩み・怒り・悲しみを処理していくというのは児童向けの『遊戯療法(プレイセラピー)』にも共通する要素だろう。

自我の弾力性は、一時的な退行と回復的な進展の力動のプロセスであり、芸術家や創作家、思想家などクリエイティブな才能のある人物の場合には、『創造的な退行(creative regression)』が発現することもある。芸術家や創作家といったジャンルの有能者というのは、幻想的・妄想的な状態に退行しやすい資質を持った人たちであり、精神分析の創始者ジークムント・フロイトは、芸術家は抑圧のキメが粗いので様々な感情・欲望が一般人よりも空想・作品の形でダイレクトに体験されやすいと語っている。

自我の弾力性は、自我の自由さ・柔らかさ・遊び心(童心)・創造力であり、幼児的な欲動の解放を楽しみながらも、現実に再適応して欲動をコントロールすることができる『パーソナリティーの成熟・柔軟性』を意味しているのである。

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posted by ESDV Words Labo at 08:57 | TrackBack(0) | し:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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