自我による欲動(リビドー)のコントロール能力と境界性パーソナリティー障害(BPD):1
自我は現実適応(社会適応)の機能として『欲動(リビドー)のコントロール能力』を持っているが、異性への欲求や自己イメージ(能力・美醜)への囚われ、社会的選択(進学・就職)の不安が強まる『思春期・青年期』にはそのコントロール機能が低下しやすい。
特に自分の異性としての評価や他者と比べた美貌の程度を気にしやすくなる思春期の女性は、美しいか美しくないか(可愛いか可愛くないか)、痩せているか太っているかといった『自己イメージ・外見の相対評価』に囚われやすくなることで、摂食障害(神経性拒食症・神経性大食症)や境界性パーソナリティー障害(BPD)のリスクが高くなりやすい。
自分の他者に対する魅力・需要が低いのではないか、見た目やコミュニケーションの取り方が悪いのではないかといった劣等コンプレックスは、思春期・青年期に特に深刻化しやすいコンプレックスではある。また年代・性別を問わず自分と他者を比較して自分はダメだという劣等コンプレックスを持ちやすい人は、うつ病・摂食障害・適応障害・社会不安障害などの精神疾患の発症リスクが高くなりやすい。自己愛・承認欲求・強迫性・回避性・被害妄想などが絡んだパーソナリティー障害(人格障害)を発症するリスクも上がりやすくなる。
境界性パーソナリティー障害(BPD)は、欲動や要求(期待)のコントロールができなくなる典型的なパーソナリティー障害(人格障害)であり、『賞賛とこきおろしの両極端な対人評価』『狂気的な見捨てられ不安と依存性』によって深刻な対人関係(家族・夫婦・恋人との関係)のトラブルを引き起こす。
境界性パーソナリティー障害は、思い通りにならない人間関係や社会生活、物事のフラストレーション(欲求不満)に耐えることができない人格障害としての側面を持っており、常に狂気的に『他者の愛情・関心・承認(慰め)』を求めていてどんなに親密に優しく接してもらってもそれだけでは満足できない深い孤独感・空虚感を抱えている。
怒りの強さや不満の多さ、不機嫌になりやすいが境界性パーソナリティー障害(BPD)の特徴であり、いったん感情的に怒ったり興奮したりすると『自分一人だけでの気分・感情のコントロール』が不可能になり、恋人や家族などの他者を無理やりに巻き込んで(自傷行為・自殺企図・自殺願望の告白など時に手段を選ばずに他者からの心配や関心を引きつけようとする)自分の感情を再調整しようとするところがある。