自我による欲動(リビドー)のコントロール能力と思春期の男女の精神疾患:2
近年は、男性と女性の『ジェンダーレス化・中性化』が進んでいて、若年層の男性では自分がイケメンかどうかなどの格好良さ・綺麗さの美醜(見た目)に女性同等にこだわる人も増えている。そのため、思春期の男性では、外見や肥満のコンプレックスから摂食障害や適応障害、境界性パーソナリティー障害、社会不安障害(対人恐怖症)といったかつては思春期の女性に多かった症例も少なからず見られるようになっている。
自我による欲動(リビドー)のコントロール能力と境界性パーソナリティー障害(BPD):1
狂気的な見捨てられ不安やしがみつき(過度の依存性)が強まると、それまで親身になって心配してくれていた親友・恋人なども手に負えなくなって途中で逃げ出してしまうことが多い。そうなると更に境界性パーソナリティー障害の人の悲しみ・孤独感・怒りが強まっていき、もっと他者にしがみつこう(自分のすべてを受け容れてもらって助けて欲しい)として敬遠されるという悪循環が繰り返される。
境界性パーソナリティー障害(BPD)の問題の中心には、『自分の感情・気分(欲動が根底にある感情)のセルフコントロールの低さや不全』があり、境界性パーソナリティー障害の人は上記したように自傷行為や口論などで他者を無理やりに巻き込んで、他者とのトラブルを通して自分の気分・感情を処理しようとするところがある。
自分の感情や衝動の自己調整能力(セルフコントロール能力)が極端に低くなっているのがBPDの特徴であり、『自分の内部にある怒り・悲しみ・不満』などを他者(恋人・家族など)に投影しやすく、自己中心的に『自分が悪いのではなく、裏切ったり怒らせたりした相手が悪い』という他者否定(こきおろし)の行動パターンに陥りやすいのである。
自我・超自我によって欲動(リビドー)が過剰に抑制されてコントロールされると、S.フロイトの精神分析でいう『神経症(neurosis)』が発症しやすくなるが、反対に欲動が思春期の年齢に相当するレベルにまで成熟していなかったり未発達だったりする時にも適応障害と近似した精神疾患が起こりやすくなってしまう。
思春期は精神的・社会的な自立が進み始める発達段階でもあり、それまで精神的・物理的に依存する部分が大きかった『母親・父親との距離感』も開いてくるが、そこにまだ自立しきれないという分離不安が加わってくると、各種の不安障害につながってしまうケースがある。
広義のマザー・コンプレックス(マザコン)やファザー・コンプレックス(ファザコン)によって、思春期・青年期の『自立困難・分離不安・欲動の対象の喪失(誰と深く親密に付き合えば良いのか誰に精神的に頼れば良いのか分からない・親友や恋人の不在による孤独感の高まりなど)』といった問題が立ち上がることがあるということである。