アスペルガー障害における社会性の障害と集団行動・社会的環境(他者の干渉)の苦手さ:1
イギリスの女性精神科医ローナ・ウイング(Lorna Wing, 1928〜)は、オーストリアの精神科医ハンス・アスペルガー(Hans Asperger, 1906-1980)が初めて報告した『アスペルガー障害(Asperger Disorders)』を再発見して当時の精神医学会に広めた功績がある。
“ウイングの3つ組”として知られるアスペルガー障害(自閉症スペクトラム)の典型的な特徴は、『社会性の障害(対人関係の障害)・コミュニケーションの障害(言語の障害)・イマジネーションの障害(こだわり行動・興味の偏り)』の3つである。社会性の障害というのは、学校・職場・地域などの社会集団において他者や状況に合わせて適応的に行動できないという障害である。
社会性の障害には『社会的な相互作用の障害』や『孤立化・他者に対する興味関心や共感性の欠如』も含まれていて、他の人と協力したり妥協したりしながら一緒に何かをして目標・課題を達成していく『共同行動(協働行動)』がかなり苦手ということでもある。自閉症スペクトラム的な特徴として社会性の障害が現れる場合には、『親密さ・共感性・共同性の回避傾向』になることが多く、話しかけられたりふれ合いを求められたりしても直接・間接に拒否しがちなのである。
アスペルガー障害や自閉症スペクトラムの人には、硬直的・排他的な赴きのある『自分の世界』があることが多く、『集団行動・社会生活・他者の干渉・ルールの強制』をひどく嫌ったり拒絶したり癇癪を起こしたりしやすいのである。
アスペルガー障害の『社会性の障害』にまつわる基礎知識がないと、そういった集団行動や社会生活、他者との相互作用における不適応が『個人のわがままさ・自分勝手さ・性格の悪さ』と誤解される形で受け取られて、余計に社会環境・人間関係が苦手になって深刻な二次障害に悪化してしまう恐れも出てくるのである。