人間の欲求と動機づけ(モチベーション)の心理学:M.ツッカーマンの『刺激作用の最適水準』
人間が何か行動を起こす時の大きな原因は『欲求(need)』であり、何かを求めようとする欲求が状況・他者の要因と結びつくことによって『行動(behavior)』が生起することになる。欲求と環境・他者の反応などが絡む行動の生起過程や行動形成メカニズムのことを『動機づけ(モチベーション)』と呼んでいる。
欲求のすべてが行動に直接的に結びつくわけではないが、欲求を前提とする必要性・希求性が強いほど行動が起こりやすくなる。食欲・性欲・睡眠欲などの生存維持・生殖に不可欠な本能的欲求を『一次的欲求』、それ以外の後天的・学習的な欲求を『二次的欲求』として分類しているが、一次的欲求は『生きるための欲求』であり二次的欲求は『より良く(より楽しく)生きるための欲求』である。
心理学で研究される欲求(need)の多くは、後天的な経験や学習、環境、人間関係によって生み出される『二次的欲求』でありその種類は非常に多い。退屈さや単調さを嫌って、新しい体験やスリルを求める二次的欲求として『刺激欲求』があり、W.ヘロンの感覚遮断実験などで明らかにされたように人はあまりに刺激が少なすぎる状況に置かれると、どうにかして刺激を求めるようになる(あるいは自分自身で声を出したり体に触れたりして自己刺激を作り出すようになる)。
どのくらいの刺激の強さがもっとも心地よくて望ましいのかには非常に大きな個人差があり、心理学者のM.ツッカーマン(M.Zuckerman)らは、この望ましい刺激の強さの個人差を『刺激作用の最適水準(Optimal Level of Stimulation)』という概念で表現した。M.ツッカーマンらは人がちょうど良いと感じる刺激の個人差を測定するために、『Sensation-Seeking Scale』という心理テスト(心理測定尺度)を開発したのである。
M.ツッカーマン(M.Zuckerman)の『刺激作用の最適水準(Optimal Level of Stimulation)』に関する心理テスト:W.ヘロンの感覚遮断実験とちょうどいいストレス
M.ツッカーマンらの『Sensation-Seeking Scale』を元にして作成された日本語版の心理測定尺度には、寺崎・塩見らの『日本語版Sensation-Seeking Scale(1987)』や古澤の『刺激欲求尺度・抽象表現項目版(1989)』がある。