内的作業モデルと愛着理論から考える人間関係2:『安定・回避・アンビバレント』に分類する内的作業モデル尺度
愛着理論(attachnment theory)では、愛着対象(他者)との間で愛着の成立・喪失に関係したさまざまな出来事を経験することによって、個人の内面に『人間関係の定型的パターン』が表象化されていくことになる。その結果、『愛着対象の有効性・信頼性についての確信(相手がどれくらい信じられるか)』と『自己についての確信(自分がどれくらい信じられるか)』が形成されることになる。
内的作業モデルと愛着理論から考える人間関係1:幼少期の好ましい愛着形成が安全感をつくる
更に掘り下げて言えば、『愛着対象の有効性・信頼性についての確信』とは、結びついている愛着対象が自分の要求に対してどのくらい前向きに応答してくれる存在であるかということの確信である。『自己についての確信』は他者についての確信を補完するものであり、自分自身が愛着対象(親しいと思っている他者)からの援助や支持に値するだけの価値ある存在であるかということの確信である。
この『他者・自己についての確信(内面にある心的表象)』は、その後の対人関係における愛着関係の出来事に影響を受けながら、一般的な対人関係での行動パターンを間接的に規定していくことになるが、これを『内的作業モデル』と定義しているのである。愛着関係の中で示される個人に特有の対人関係の行動パターンを『愛着スタイル』というが、この愛着スタイルにも内的作業モデルが影響を及ぼしている。
戸田弘二は愛着理論(乳幼児期の愛着パターン)を参考にして内的作業モデルを『安定・回避・アンビバレント(両価的)』の三次元に分類してから、その内的作業モデルの特徴の個人差を測定する心理測定尺度『内的作業モデル尺度(1988)』を作成している。『内的作業モデル尺度』で測定された個人差は、ストレスや自己統制、パーソナリティー特性、死の恐怖感などとも相関する可能性が指摘されている。
『安定型』は、他者は応答的・好意的であり自己は援助されるだけの価値がある存在だという心的表象を持っている。『回避型』は、他者は非応答的・拒絶的であり援助を期待することはできない、この不安感を補完するために自己に対して他者と相互作用しなくても自分は価値のある存在だという表象を持つ。『アンビバレント型』は、他者に対して信頼と不信のアンビバレント(両価的)な表象を持ち、自分には価値がないとする自己不全的な表象が強くなっている。
『内的作業モデル尺度』の代表的な質問項目には以下のようなものがある。『1.全くあてはまらない、 2.あてはまらない、 3.あまりあてはまらない、 4.ややあてはまる、 5.あてはまる、 6.非常によくあてはまる』の6件法から選択するものになっている。
[安定型の尺度]
○私はすぐに人と親しくなるほうだ。
○私は人に好かれやすい性質だと思う。
○気軽に頼ったり頼られたりすることができる。
○初めて会った人とでも、うまくやっていける自信がある。
[回避型の尺度]
○私は人に頼らなくても、自分一人で充分にうまくやっていけると思う。
○あまりにも親しくされたり、こちらが望む以上に親しくなることを求められたりすると、イライラしてしまう。
○人は全面的には信用できないと思う。
○どんなに親しい間柄であろうと、あまりなれなれしい態度をとられると嫌になってしまう。
[アンビバレント型の尺度]
○人は本当は嫌々ながら私と親しくしてくれているのではないかと思うことがある。
○自分を信用できないことが良くある。
○あまり自分に自信がもてないほうだ。
○私はいつも人と一緒にいたがるので、時々、人から疎まれてしまう。