精神分析と自我・超自我による欲動のコントロール機能の評価:境界性パーソナリティー障害(BPD)の投影同一視
境界性パーソナリティー障害(BPD)の人は自分の激しい感情・衝動に対する自我のセルフコントロール能力が著しく低く、そのために『他者との不適切な人間関係(他者に自分の怒り・不安・欲求を投影するような人間関係)』の中でしか自分の感情を表現できず衝動を処理できない。
精神分析における性的欲動の『症状・夢・空想(白昼夢)』への転換:境界性パーソナリティー障害(BPD)の自己制御の障害
自分の持っている『怒り・不満・攻撃性・不安・強い欲求』などを、他者に投影することによって相手を責める。他者とのゴタゴタやトラブルを引き起こして、その中で自分の感情や衝動を処理しようとするので、境界性パーソナリティー障害(BPD)の人に付き合わされる恋人・家族の多くは心理的に振り回されて疲弊してしまうのである。
親しい他者に自分の感情・衝動を処理してもらいケアしてもらおうとするのが、境界性パーソナリティー障害(BPD)の人の大きな特徴であり、こういった自分の中にある感情や欲求を相手に押し付けて、それを相手が持っているものとして同一化してしまう原初的な自我防衛機制のことを『投影同一化(投影同一視)』と呼んでいる。
精神分析の『自由連想・夢判断』を介する心理面接では、自我・超自我による欲求と衝動のコントロール機能が評価されることになるが、その時に注目するポイントには以下のようなものがある。
○生理的な欲動を直接的な行動で表現しやすいのか、『空想・夢・症状』に置き換えてしまいやすいのか?
○いつも日常的に抱いている『空想・願望・性的欲求』にはどのようなものがあり、それを思い浮かべた時に『罪悪感・羞恥心・社会的非難』などを感じることがあるか?
○性的な欲動・空想を意識した時に、超自我による道徳的な罪悪感や社会的な恥ずかしさを感じることが多いか、あるいは超自我の形成不全で性的な欲動を直接的な行動にしやすいのか?
○自分の欲動・空想を過度に道徳的・感情的に抑圧することによって、『超自我との同一化』が起こり、他者に対しても『禁欲的・批判的・サディスティック(嗜虐的)』になっていないか?
○超自我の形成不全や欠損によって、犯罪・非行・性的逸脱・嘘つきなどの『反社会的パーソナリティー傾向』が強まっていないか、TPOや法律・道徳に合わせて自分の欲動・空想を適切にコントロールできているか?
○超自我形成の背景にどのようなエディプス・コンプレックスや両親との関わり合い(精神発達上の意味を持つ両親のイメージ)があるのか?