精神分析で評価される“外的な対人関係”と“内的な対象関係”1:転移感情
フロイト以後の精神分析では、幼児期の移行対象を取り上げたドナルド・ウィニコットや英国独立学派を立ち上げたメラニー・クラインをはじめとして、対象関係(object relation)を重視した人物が多い。
精神分析でいう『対象関係(object relation)』とは、内面心理にある他者の表象(イメージ)との関係であり、自分の外部に実際にいる他者と自己との関係でもある。その意味で、対象関係には『内的な表象(イメージ)との関係性』と『外的な実際の他者との関係性』という二つの関係性が含意されていることになる。
『対人関係』は外的な実際の他者との関係性だけを扱うが、『対象関係』はそれに内的な表象(イメージ)との関係性を加えたものである。精神分析的な面接では、精神分析家(カウンセラー)と被分析者(クライエント)との間で生起する強い愛憎の感情である『転移・逆転移(transference, counter-transference)』も分析していくことになる。
転移とはクライエントが精神分析家に向ける愛憎感情、逆転移とは反対に精神分析家がクライエントに向ける愛憎感情であり、いずれも『過去の重要な人物(主に親)』に向けるべき感情を現在の別の相手に向け変えているものである。この『転移・逆転移』というのは、過去の重要な人物(親)に向けていた強い感情を、過去の内的な表象(イメージ)の対象関係を元にして、別の相手(親しく話している精神分析家およびクライエント)に向け変えるという防衛機制である。
クライエントは精神分析的面接を受けることによって、『実際の精神分析家との関係』だけではなくて、転移・逆転移の防衛機制となって現れる『過去の重要な人間関係と相関した内的な表象(イメージ)の対象関係』も経験することになる。
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