現代日本における非婚化の要因1:若者の平均所得低下・非正規化とパラサイト・シングル
現代で20〜30代前半の男女の結婚が過去に比べて大きく減少している要因の一つが、『出会いがない+異性の選り好み(高望み)』と『経済的に結婚が難しい+結婚のコスト上昇』である。かつては『一人口は食えぬが二人口は食える』という言い回しがあったように、男一人(女一人)で暮らすよりも男女二人が一緒に暮らした方が生活費が安くなるという考え方があったが、現在ではその『結婚による生活費削減』の考え方は、未婚者のかなりの割合の人に通用しなくなっている。
男性の未婚者には年収200〜300万以下の非正規雇用(派遣社員・臨時職員・期間社員・アルバイトなど)で働く相対的な低所得者が多く、女性の未婚者も男性より年収が低い非正規雇用が多い。しかし、現代の未婚者は低所得でも『実家暮らし・両親との関係も悪くない(中には親子関係が険悪な家もあるにせよ)』の割合が高くなっているため、自立的な結婚をして実家をでなければそれなりの生活水準が成り立つというケースが増えているのである。
結婚による生活費削減という結婚を後押しした要因が、現代では社会学者の山田昌弘(やまだまさひろ)が著書『パラサイト・シングルの時代』で指摘した『実家暮らしの低賃金の独身男女の増加(家賃・食費・家事コストなどの一定以上の部分を実家に負担して貰える独身男女)』によって、通用しづらくなっているというわけである。
実家暮らしの独身男女でも、月に数万円程度は生活費として家(親)に入れていることは多いが、それでも10万円以上のお金を入れている人は少なく、結婚して二人で暮らす家を借りたり買ったりして食費・水道光熱費・雑費なども支払えば(子供ができればなおさら教育費関連の大きな支出も増えて)、実家暮らしよりも相当に大きなお金がかかるようになること(自分自身で自由に使えるお金が殆ど無くなること)を分かっているのである。
非正規雇用や短時間労働の形態では、夫婦共働きでも余裕のある豊かな結婚生活を送ることは不可能であり、『平均所得前後を貰える正規雇用にシフトしたくても雇ってもらえない人』や『現状の非正規雇用や短時間労働(非フルタイム)のほうが自分に合っていてこれ以上無理したくないと思う人』は結婚から必然に遠ざかることになる。
女性の場合はまだ『異性としての魅力・出会いの多い環境・恋愛関係の深まり』があれば、非正規雇用や短時間のアルバイトでも、自分に惚れてくれたり結婚したいと思ってくれた正規雇用や稼げる男性と結婚して、人並みの結婚生活や子育てができる可能性は少なからずあるが、男性が実家暮らし・非正規雇用で所得増加のための取り組み(仕事の掛け持ち・キャリアアップの転職や資格取得)に熱心でない場合には結婚はかなり難しくなってくる。
男性は正規雇用・専門職などでしっかり稼いでいないと結婚しづらいのに、女性は仕事・収入が十分でなくても男性に気に入られたり恋愛関係を深められれば結婚しやすいというのは男女差別ではないかという意見もあるが、性的魅力・ジェンダーの差異に基づく男女差別ではあるが、現在では『男性の平均所得が低下したこと(男性側の妻子を扶養できる経済力やその意思が弱くなったこと)』によって『稼げない・労働意欲が低い女性』も以前よりかは結婚しにくくなっているのである。