『親役割診断尺度(PRAS:Parental Role Assessment Scale, 1993)』の解説1:現代の親子関係における親の権威喪失と親役割の曖昧化
現代では『親子間の上下関係(指導関係)』が弱まって、『親の果たすべき役割』が曖昧化しているといわれるが、現代においても『親が子に対して果たすべき役割』は非常に多くて親役割の遂行は難しいものである。
特に、自我が強くなって友人関係や異性関係が複雑化してきやすい『思春期・青年期の子育てと親子関係』は難しく、親が子に対してどのような役割を果たせるかが重要になる場面は多い。
中学生・高校生の子供に起こりやすい精神発達上の課題あるいは環境適応上の問題として、『不登校・家庭内暴力・非行行為・性的逸脱(援助交際など不適切な異性関係)・学校中退後の無為やニート』などがあるが、こういった問題行動が起こった時に親役割や親の責任が問われやすくなる。
中高生の子供が問題行動や不適応を起こした場合には、学校の先生や相談機関の担当者は、まず親に問題状況を報告して親との間で話し合いの機会を設けることが多い。
親が親として社会・子供に期待される役割を果たしていくことは大切であるが、初めからスムーズかつ効果的に親役割を果たせる親ばかりではない。親自身も子供の問題や各種の場面に対応しながら、一つずつ『親としての役割・責任』を学んで獲得していかなければならないのである。
子供が問題行動や不適応を起こした時には、親は自分自身の親としての役割・能力に自信を失っているが、こういった場合には親は『自分の行動・発言が子供にどのような影響を与えているのか?(どのようにすれば良い影響を与えられるのか?)』について客観的に把握して対処していく必要がある。
中学生・高校生の子供を持つ親に、自分自身の親としての役割・影響を自己評定してもらう心理評価尺度(心理テスト)に、谷井・上地が開発した『親役割診断尺度(PRAS:Parental Role Assessment Scale, 1993)』というものがある。この心理評価尺度を活用することによって、親役割の行動の具体的な問題点や改善点を明らかにしていきやすくなるのである。