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2007年06月27日

[家系研究法(family tree study, pedigree method)とフランシス・ゴールトンの優生学]

家系研究法(family tree study, pedigree method)とフランシス・ゴールトンの優生学

遺伝的な優劣を選別する「優生学(eugenics)」を着想したことで知られるフランシス・ゴールトン(1822-1911)は、生物学的な適応能力や知的能力、性格特性の大部分は遺伝子(遺伝要因)によって規定されると考えていた。イギリスの遺伝学者・統計学者であるフランシス・ゴールトンは、人間の知能・適性・性格といった特性がどのような要因によって規定されるのかを研究するために、家系樹(血縁・家系図)を用いた家系研究法(family tree study, pedigree method)を発明したとされる。

遺伝子決定論者であるゴールトンは祖先や両親からの遺伝素因によって『個人の能力・性格・適性』が決定されると考えており、歴史上の天才や偉人の家系樹(家系図)を調査して縦断的研究をすることで「優秀な家系には優秀な人材(天才)が生まれやすい」という一般法則性を定立しようとした。家系研究法では家系樹を描いて父系親族(父方の男系の祖先)を遡っていく方法が一般的であるが、母系親族を遡って『先祖の経歴・属性・業績』を調査することもある。しかし、家系研究法は、「一族の経済力・社会的地位・教育環境・人脈の質」など環境要因を無視して遺伝的な血縁関係のみに着目する「偏った研究法」なので、現在では反証可能性のある科学的研究法であるとは言えない。

個人の才能や資質の要因を「遺伝要因」と「環境要因」に区別する研究法は現在のところ確立しておらず、その人の発現している「知的能力・社会的スキル・性格傾向・経済的成功」などが遺伝要因によるのか環境要因によるのかを断定することはできないのである。ゴールトンの家系研究法は歴史的な天才や偉人の優秀な家系研究だけでなく、犯罪者や異常者、娼婦、成績劣等者(知的障害)などの家系研究にも応用された。

人権思想が普及してからは、「遺伝重視の家系研究法」は社会的な偏見や差別を助長するという批判を浴びたが、19世紀〜20世紀初頭のアメリカでは「劣等な遺伝子を持つ家系が多くの子どもを産み、犯罪者や無能者を増やす恐れがある」という優生学的な論調が説得力を持つようになっていた。1920年代から1940年代までのアメリカや日本、欧州先進国では、犯罪者・障害者・伝染病者の生殖機能を奪うことが非人道的な『断種法』によって合法化されていた。

その後、優秀な遺伝子を継続させ劣等な遺伝子を淘汰するという差別主義的な優生学は、ナチス・ドイツがユダヤ人を民族浄化しようとしたホロコーストの悲劇へと結実することになる。その為、遺伝学的・統計学的に『人間・民族の生命の質』を判断しようとする優生学は、『悪魔の学問』といって非難されることもある。優生学を連想させた家系研究法には、精神遅滞(無能者・怠け者)や犯罪者を多く生み出したアダ・ジューク家の家系樹を調査したダグディルの研究がある。

それ以外にも、犯罪者・娼婦・知的障害者を多く輩出したカリカック家の家系樹を調査したH.H.ゴダードの研究もあるが、現在の心理学や遺伝学の見解では、こういった犯罪者や逸脱者を数多く出した家系の要因は純粋な遺伝的要因ではないと考えられている。天才・偉人にしても犯罪者や粗暴者にしても、遺伝と環境(教育環境・経済力・周囲の人間関係)の要因が複雑に絡み合って、その個人の性格特性や知的能力が段階的に規定されていくのである。



posted by ESDV Words Labo at 02:08 | TrackBack(0) | か:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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