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2007年06月27日

[家族心理学(family psychology)と家族危機への心理学的介入(family crisis intervention)]

家族心理学(family psychology)と家族危機への心理学的介入(family crisis intervention)

家族心理学(family psychology)は臨床心理学や社会心理学との機能的関係が深い応用心理学であり、「行動科学的な研究法」と「心理臨床的な介入法」を用いて家族関係(家庭生活・結婚生活・育児過程)の心理学的現象を明らかにしようとする学問である。簡単に言えば、家族・親子・結婚にまつわるあらゆる心理学的問題と人間関係を取り扱う心理学分野であり、家族心理学の成果は家族間の問題や葛藤の解決を支援する家族カウンセリング(家族療法)に応用されることになる。また、学問の発生順序から考えると、家族心理学よりも家族カウンセリングや家族療法の技法と実践が先に発達した。システムズ・アプローチ(家族システム論)に基づくカウンセリング(家族療法)の成果を踏まえて、家族心理学の目的や課題、要請が生まれてきたのである。

家族内の人間関係は『親子関係・夫婦関係・兄弟姉妹関係・嫁姑(舅)関係・祖父母‐孫関係』に分類することができ、家族心理学では『家族関係の特徴・変化・相互作用・援助方法』などを研究課題にして調査と考察を進めていくことになる。現時点における『共時的な家族関係』だけではなく、時間と共に段階的に変化していく『通時的な家族関係』も家族心理学の研究内容となっており、通時的な家族関係の変化である『家族の形成・発達・変容・崩壊・(再生)』のことをファミリー・プロセス(家族過程)と呼ぶことがある。恋愛関係が結婚関係へと発展していく個人の心的過程やアイデンティティの確立も取り扱うし、結婚・離婚・再婚に関係する心理社会的な要因の分析というのも家族心理学の研究範囲に含まれている。

家族心理学の基本的な家族観(家族認識)は、システム論(システムズ・アプローチ)に基づく円環的な家族観であり、家族成員の相互作用(相互的コミュニケーション)によって問題や成長、変化が現れると考えている。『円環的な家族観』に対立するのが『線形的な家族観』であり、円環的な家族観では問題の原因を「誰か一人の問題行動(精神病理)」に求めることがないが、線形的な家族観では「精神病理や性格の偏りを持つ個人」を特定してその人に問題の原因があると考える。

『円環的な家族観』は、非行・不登校・虐待・依存症・摂食障害などの家族病理の原因を「単一の家族成員の問題(病理)」に還元することがなく、家族の相互作用(双方向のコミュニケーション)の異常や社会・経済的環境による影響によって問題が段階的に形成されてくるという家族システム論(family systems theory)の立場に立つ。不登校や非行、家庭内暴力、ひきこもりなど『家族の病理』はただ一人の心の内面に宿るのではなくて、他の家族とのコミュニケーションによるストレスや社会・経済的環境におけるマイナスの影響、悪友との人間関係で生まれる拘束感などによって発生してくるのである。その為、家族システム論では、問題を抱えている家族成員を患者や問題児などと呼ばないで、IP(Identified Patient, 患者と見なされている人)と暫時的に呼ぶことがある。

家族危機(family crisis)とは、家族の問題対応能力とストレス耐性(ストレス・トレランス)の限界を越えた問題状況のことである。家族が危機に直面する問題状況には、『心理的な問題・対人関係的な問題・経済的な問題・社会的な問題』を想定することができ、一定のストレスの閾値を越えた家族危機は、上記したような各種の家庭内病理の原因となる。家族危機には、子どもの発達段階の過程で必然的に発生する『発達的危機』と家族観のコミュニケーションの障害や社会・経済的な事情の悪化によって偶発的に発生する『状況的危機』がある。

家族カウンセリング(家族療法)ではそういった家族危機に短期集中的に対処していくような『家族危機介入』の技法が準備されており、心理臨床家は積極的かつ能動的に家族問題へと介入していく。単独での危機介入や心理面接で対応できない場合には心理臨床家でチームを組んで、自分たちの側から心理学的援助のための家庭訪問を行ったり、(生活保護など行政支援も含めて)専門機関への斡旋を行うこともある。



posted by ESDV Words Labo at 03:29 | TrackBack(0) | か:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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