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2007年07月09日

[現実神経症(actual neurosis)と精神神経症(psychic neurosis)]

現実神経症(actual neurosis)と精神神経症(psychic neurosis)

精神分析学を創始したS.フロイトの精神病理学における最大の功績は、『神経症(neurosis)の発見』である。『神経症(ヒステリー)とは何なのか?』という定義を厳密に進めていくと、神経症とは『精神的原因によって発症するさまざまな心身症状』であり単一の疾患として定義できるものではない。古典的な精神医学では、精神疾患のスペクトラムを、ヒステリー・不安神経症・恐怖症・強迫神経症・抑うつ神経症などの『神経症水準』と幻覚や興奮・錯乱を伴う統合失調症などの『精神病水準』に分類していたが、神経症水準と精神病水準の違いは『病態の重症度』『現実吟味能力の有無』にあった。

精神分析療法の適応症である古典的な神経症は『不安・緊張・興奮を主軸とする精神疾患』であり、一般的に難治の傾向があり慢性の経過を取ることが多い。現在のDSM‐Wの診断マニュアルでいえば『全般性不安障害・社会不安障害・強迫性障害・うつ病性障害・解離性障害・各種の心身症・演技性人格障害・境界性人格障害・自己愛性人格障害』などを包括する非常に範囲の広い疾患概念である。つまり、古典的な神経症とは、器質的障害(脳・身体の物理的な障害)がないのに発症する『心因性の精神疾患全般』を意味する病理概念であり、クラスターB(B群)の人格障害や心身症の特徴まで含んでいるのである。

S.フロイトは『精神症状のブラックボックス』であり『非適応的な人格特徴の集積』であるこの神経症を、『現実神経症(actual neurosis)・精神神経症(psychic neurosis)・性格神経症(characteral neurosis)』という3つの神経症に分類した。この3つの神経症の分類は、病因論の観点に基づいている。フロイトは外的現実性によって生起する不安を『現実不安(realistic anxiety)』と呼んだが、この現実不安の精神的ストレスによって発症する神経症のことを『現実神経症』と呼んでいる。

現実神経症(actual neurosis)は、現実生活におけるフラストレーション(欲求不満)や現実不安が蓄積して大きな精神的ストレスがかかることによって発症する神経症であり、精神神経症と比較すると『心理的原因の特定』が比較的容易である。精神神経症(psychic neurosis)は、精神‐防衛神経症と呼ばれることもあるように、無意識領域にある思い出すことが難しい『過去の心的外傷の記憶(乳幼児期の情動体験)』が原因となって発症する神経症のことである。

精神神経症では、精神分析療法の特殊な技法や環境を用いないと『心理的原因の特定』をすることが極めて難しい。精神神経症の根本原因は、『無意識的な葛藤(過去の抑圧された記憶や経験に基づく内的葛藤)』による『リビドー発達の停止』である。乳幼児期に外傷体験(愛情の喪失体験)をすると、精神発達が停止した『固着点(発達段階)』にリビドーが『退行』するが、その幼児期への精神退行によって防衛的な神経症症状が生まれるとフロイトは考えた。

性格神経症(characteral neurosis)とは、『情緒不安定・依存性・幼児性・誇大性・興奮性・抑うつ的・衝動的・自己嫌悪的(自己批判的)・環境不適応』といった生得的な性格特性が原因となって発症する神経症であり、『社会不適応をもたらす過度の性格傾向の偏り』という意味で、現在の人格障害などに近似する病理概念と解釈することもできる。



posted by ESDV Words Labo at 10:18 | TrackBack(0) | け:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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