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2007年08月10日

[見当識障害・失見当識(disorientation)]

見当識障害・失見当識(disorientation)

人間の脳器官の構造は、大きく『脳幹・大脳辺縁系・大脳皮質』の3つの領域に分けることができ、脳幹は「呼吸・脈拍・血圧・体温」といった生命維持機能を担い、大脳辺縁系は「闘争‐逃走反応」を中心とする情動的(動物的)な価値判断を担っている。脳幹は魚類や両生類にも見られる最も原始的な脳の構造であり、本能的情動を司る大脳辺縁系も爬虫類の進化の段階で形成された比較的古い脳であり「古皮質(爬虫類脳)」と言われることもある。

脳の外側を広く覆っている大脳皮質は「大脳新皮質」と呼ばれることもあるように、小型哺乳類の進化の過程で獲得した新しい脳の構造であり、「人間らしい精神機能(理性的思考・学習・記憶・計画・判断・共感)」を実現するために必要不可欠な部位である。大脳皮質は、人間固有の高次脳機能(理性的思考・学習・記憶・計画・判断・共感)を発現する部位であり、問題なく日常生活を送るために欠かせない「見当識(orientation)」もヒトの高次脳機能の一つである。その為、大脳皮質が物理的に損傷したり、病理的な異常が見られたりすると、見当識にさまざまな障害が見られることがある。

見当識(orientation)とは、人間が他者と関わる日常生活に適応するために必須の基本的認識機能のことであり、具体的には「時間・場所・自己認知(名前や年齢)・対人認知(名前や関係性など)・状況認知に関係する認識機能」のことである。見当識のレベルは、意識障害の深刻度や分類を測定するために重要なメルクマールであり、見当識に異常や低下が見られることをまとめて「見当識障害(disorientation)」と言っている。

見当識障害が発生する疾患として最も良く知られているものは、高齢者・若年者の認知症(脳血管型認知症・アルツハイマー型認知症)であるが、事故や怪我による脳の器質的障害によっても見当識障害が起こり得る。一時的な軽度の見当識障害であれば、頭を激しくぶつけた時に意識が朦朧とする「脳震盪(のうしんとう)」でも起こるし、重度の車酔いで三半規管の機能が低下した時にも「見当識失調」と呼ばれる平衡感覚の乱れや意識レベルの低下が見られることがある。

幻覚・妄想の陽性症状が頻繁に出現する重症の統合失調症や、過去の記憶内容を想起できなくなり自己アイデンティティが拡散する深刻な解離性障害(解離性健忘・解離性遁走・解離性同一性障害)でも、各種の見当識障害が発症することがある。



posted by ESDV Words Labo at 07:00 | TrackBack(0) | け:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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