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2007年12月18日

[フロイトの性的発達理論と肛門期性格(anal character)]

フロイトの性的発達理論と肛門期性格(anal character)

精神分析学の創始者であるS.フロイト(1856-1939)は、人間の精神発達過程を説明する理論として性的精神発達理論(リビドー発達論)を提唱した。リビドー発達論ではリビドー(性的欲動)を充足する「性的部位」によって発達段階を考えるので、「口愛期(0歳〜1歳半頃)・肛門期(1歳半〜3歳頃)・男根期(エディプス期,4歳〜6歳頃)・潜伏期(6歳〜12歳頃)・性器期(12歳以上の性器統裁の段階)」という発達段階に分類されることになる。リビドーの性的欲動というのは生物学的な快楽原則によって生まれるものであり、「心理的・生殖的な性欲」や「文化的なエロスのイマジネーション」とは直接的な関係はない。生まれたばかりの赤ちゃんは口唇を母親の乳房に押し付けて母乳を吸うことによって快楽を感じるが、その際に心理的な性欲が伴っているわけではない。

同様に、男根期あたりまでのリビドー充足は、それ以降の心理的・文化的に喚起される性欲とは質的に異なるものであり、それらはまとめて部分性欲(幼児性欲)と呼ばれることがある。口唇・肛門・相手のいない自己の性器など「部分的な自己愛」の段階に留まっているものを「部分性欲」と呼ぶが、12歳以降の性器期では対象(好きな相手)のいる「全体性欲」が生まれてくるのである。肛門期(1歳半〜3,4歳頃)の子どもは両親(養親)から自分自身で排泄するためのトイレット・トレーニングを受けることになるが、この発達段階の子どもは大便の保持と排泄に伴う「象徴的な対象関係」を内面で体験しているとフロイトは考えた。幼い子どもが大便を上手く排泄できた時に、両親は「よくできたから偉いね。これで一人でトイレに行けるようになるね」といった賞賛と肯定の言葉を子どもに投げかけるが、このオペラント条件付けの繰り返しによって子どもは大便に象徴的価値を見出すことになる。

子どもの精神内界では、(トイレット・トレーニングの成果である)大便が貨幣や黄金など価値あるもののメタファーとなっている場合があり、その場合には大便を親に見せようとしたり強い関心を示し続けたりすることがある。反対に、両親が子どもの排泄行為を極端に嫌って、トイレット・トレーニングが上手く進まない子どもを馬鹿にしたり厳しく怒鳴りつけたりするような時には、子どもは排泄行為を罪悪感や自己否定感の感情と結び付けてしまい、肛門期性格という特徴的な性格を形成してしまうことがあるという。

精神分析的に生理学的な排泄を考えると、肛門括約筋による自己の身体と他者(親)の感情のコントロールという意味合いを持ち、精神分析的な精神病理学ではサディズムやマゾヒズムの性格形成とも深いつながりがあるとされている。大便を保持(貯留)するか排泄するかの葛藤によって、自分の身体や大人の態度を無意識的にコントロールしようとするところにサディズム的な攻撃性(マゾヒズム的な自虐性)が芽生えることがあるのである。

肛門期の発達段階にリビドーが停滞することによって形成される性格傾向が肛門性格(anal character)であり、その特徴として『倹約・吝嗇(ケチ)・頑固・几帳面・神経質・強迫的』などを上げることができる。倹約やケチなどの特徴は、大便の保持によるリビドー充足への固着であり、お金・利益・時間を必要以上に保持することにつながっている。融通の効かない頑固さや偏屈さというのは、トイレット・トレーニングを強制してくる母親への抵抗への固着であり、受動的攻撃性を持つ特異な性格構造につながっている。強迫的な几帳面さや礼儀正しさは、肛門期特有のサディズムに対する反動形成の現れであり、肛門性格では特定の行動や規範に対する従属性が見られることがある。強迫性障害と肛門性格の関連性について指摘した精神分析家の意見は多いが、エビデンスベースドな心理学では強迫性障害の生物学的原因(セロトニンの分泌障害)が重視されている。



posted by ESDV Words Labo at 17:51 | TrackBack(0) | こ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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