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2008年02月26日

[統合失調症の陽性症状としての作為体験]

統合失調症の作為体験

統合失調症には、健常者には見られない精神状態が発現する『陽性症状』と健常者に見られる精神運動性が欠如する『陰性症状』とがある。陽性症状の典型的な症状は『妄想・幻覚・興奮』であり、神経伝達物質のドーパミンの分泌量の過剰(ドーパミン神経の受容体の過敏性)が関係しているとされる。統合失調症の治療に用いられる抗精神病薬(メジャートランキライザー)は陽性症状に対して効果が発揮されやすいが、それはメジャートランキライザーが『ドーパミンD2受容体』に結合してドーパミン系の情報伝達を遮断するからである。陰性症状は、かつて緊張型統合失調症と呼ばれた症例によく見られたもので、脳神経学的な原因としてはドーパミンやセロトニンの分泌量の異常な減少が想定される。陰性症状では、『感情の平板化・意欲減退・無気力・自閉・無為』などの精神活動の著しい低下が見られ、重症化すると他人の言葉や周囲の刺激に殆ど反応しなくなる。

妄想(delusion)というのは『現実的根拠のない間違った事柄を信じ込むこと・修正不能な明らかに間違った信念(考え)を持つこと』であり、最も典型的なものとして『被害妄想・嫉妬妄想・関連妄想』などがある。『誰かに絶えず見張られている・自分を罠にかけて陥れようとしている・陰謀を企む巨大組織(国家機関)が自分を付け狙っている』などの統合失調症の被害妄想が顕著になると、他人がどんなに客観的な証拠や丁寧な説得をしてもその間違った信念(思い込み)を訂正することが出来なくなる。幻覚(illusion)というのは実際に存在しないものを知覚することであり、実際に聴こえない音が聴こえる『幻聴』や実際に存在しないものが見える『幻視』などがある。

陽性症状を主要症状とするものを『T型統合失調症』、陰性症状を主要症状とするものを『U型統合失調症』と呼ぶが、統合失調症の病態の本質が陽性症状にあるのか陰性症状にあるのかは精神医学者によって見解が異なる。しかし、陽性症状は急性期のみに見られることが多く、E.クレペリンやE.ブロイラーが指摘するように正常な精神機能の喪失である陰性症状を統合失調症の基礎障害とする見かたも有力である。急性期に激しい妄想・幻覚に襲われた患者の多くも、その後の経過では、精神運動性が大幅に障害されて感情鈍磨や意欲消失・自閉など慢性的な陰性症状に悩まされることが多い。陰性症状が慢性化すると、周囲の環境や他人の言葉に適切に反応できないことで社会生活を送ることが難しくなる。

統合失調症で見られる『作為体験』は、陽性症状の一つに分類される病理的体験であり法律上の責任能力を阻却する『心神喪失・心神耗弱』とも密接に関係している症状である。作為体験は『させられ体験』とも言われるように、自分の身体や精神に対する『自律的・主体的な統制能力』を失う体験であり、誰かに操られているように何らかの行動をしてしまうことである。

自分の意志や判断とは無関係に、何らかの力や声(幻聴)に操られて無意識的にある行為をしてしまうことを作為体験と呼ぶ。自分で自分の行動をコントロールできなくなる作為体験によって『自殺企図・自傷行為・他害行為』などの不適応行動が誘発されてしまうこともあるので、患者に作為体験が見られる場合には十分な注意と観察、アフターフォローが必要である。作為体験による問題を未然に抑制するためには、医師など医療関係者だけではなく家族の積極的な協力と温かい保護が欠かせない。

posted by ESDV Words Labo at 05:19 | TrackBack(0) | さ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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