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2008年03月08日

[知能の定義と知能検査:キャロル・ドウェックの熟達志向の知能理論]

知能の定義と知能検査:キャロル・ドウェックの熟達志向の知能理論

知能(intelligence)とは何であるのかを定義した心理学者は数多くいるが、一番よく知られている知能の定義は『ビネー式知能検査』で測定される知能指数(IQ, Intelligence Quotient)である。ビネー式知能検査は、フランスの初等教育(義務教育)において特別支援教育を受けるべき精神遅滞児(知的障害児童)を選別するために、心理学者ビネーと医師シモンによって開発された知能テストである。ビネー式知能検査は世界的に実施されている知能検査であり、『スタンフォード・ビネー知能検査』『田中・ビネー知能検査』『鈴木・ビネー知能検査』などが存在する。個別式知能検査として最も利用率が高いものは、『ウェクスラー式知能検査』と『ビネー式知能検査』である。集団式知能検査として良く知られたものには、『田中B式知能検査』や『京大NX知能検査』などがある。

知能指数(IQ)は『精神年齢(MA)÷生活年齢(CA)×100』の公式によって算出され、IQ100が平均値とされる。精神年齢(mental age)は、その発達年齢の人(子ども)が『正しく回答できると予測される問題』にどのくらい正答できるかによって測定され、生活年齢よりも高い年齢向けの問題に正答できればIQは高くなる。ビネー式知能検査は、一般に言語性知能の測定に向いているが、ウェクスラー式知能検査は、言語性知能と非言語性知能を合わせた多面的な知能の測定に向いている。

心理学者が定義した主な知能観としては、以下の4つがよく知られている。L.M.ターマン(L.M.Terman)は、知能を目の前に実際に無いものについて思考・推測・計画する『抽象的な思考能力』と定義した。W.シュテルン(W.Stern)は学問・記憶などに用いる言語的知能よりも生きていく為の適応能力のほうを高く評価して、知能を『新しい環境への適応能力』であると定義した。W.F.ディアボーン(W.F.Dearborn)は、今よりも適応的な知識・経験・技術を習得する学習能力こそが知能であると考え、知能を『新たな知識・技能を習得する学習能力』と定義した。ウェクスラー式知能検査を開発したD.ウェクスラー(D.Wechsler)は、外部環境への柔軟な適応を効果的な情報処理を重視して、知能を『周辺環境を理解し、与えられた状況(問題)を適切に処理する能力』と定義した。

特性因子論でも知られるアメリカの心理学者R.B.キャッテルは、知能を、その場その場の問題解決や状況対応に役立つ『流動性知能(fluid intelligence)』と言語機能(記憶機能)や一般知識の習得に支えられた『結晶性知能(crystallized intelligence)』とに分類した。流動性知能とは臨機応変に問題を解決する知能であり、結晶性知能とは勉強・経験による記憶によって蓄積されたある程度固定的な知識・知見のことである。人間関係を円滑に維持するためのコミュニケーション・スキルも知能に関係しているが、こういった対人関係に役立つ経験に根ざした結晶性知能のことを『社会的知能(social intelligence)』と呼ぶこともある。

アメリカの心理学者キャロル・ドウェック(C.Dweck)は、知能が努力によって向上すると思うかどうか(知能に対する認知・考え方)によって子どもの学習意欲が変化するという知能理論を提起した。C.ドウェックは、『知能に対する認知・学習目標の設定・知能に対する自信・学習行動(学習意欲)』の間に相互に相関があることを発見し、知能が固定的と考える『実体理論』と知能が可変的と考える『拡大理論』とでは子どもの学習行動に大きな違いが出てくると述べた。

知能が生得的な要因によって決まっているという『実体理論』では、『努力の価値』が相対的に低くなるので、初めから成績が良くて自分の知能に自信がある子どもは高い学習意欲を持つが、反対に成績が悪い子どもは頑張ってもムダだと思って勉強をしなくなる。知能が自分の努力や勉強方法の工夫で伸びるという『拡大理論』では、『努力の価値』が相対的に高くなるので、自分の知能に自信がある子どもも自信がない子どもも『今の自分よりも高いレベル(良い成績)』を目指して学習行動を持続させやすくなるのである。学校教育の目標の一つは、子どもに知的好奇心を持たせて学習行動を継続させることであるから、学校の教師は必然的に『拡大理論に基づいたそれぞれの知能を発達させる教育』を行うことになる。今よりも優れた自分、昨日よりも成長した自分を目指して努力する行動パターンを『熟達志向の行動パターン』というが、学校教育では子どもたちに熟達志向の行動パターンを取らせるように教育の努力・改善をしなければならない。



posted by ESDV Words Labo at 04:47 | TrackBack(0) | ち:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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