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2008年03月12日

[参加的観察(participant observation)・非参加的観察・H.S.サリヴァンの『関与しながらの観察』]

参加的観察(participant observation)・非参加的観察・H.S.サリヴァンの『関与しながらの観察』

基礎心理学や応用心理学では、仮説理論を科学的に検証するために『実験・観察』を行うが、調査したい対象(現象)を観察する観察法には『参加的観察(participant observation)』『非参加的観察(non-participant observation)』とがある。参加的観察法とは観察対象と一緒に活動(生活)しながら、必要な情報(データ)を収集する方法であり、観察されている対象(人物)に『観察されているという印象(違和感)』を余り与えずに観察できるというメリットがある。観察者は、観察の対象となっている集団(人物)に感情移入しながらごく自然に振る舞うことが重要であり、参加的観察では『主観的参加(主観的コミュニケーション)』『客観的観察(客観的な情報収集)』を両立させなければならない。簡単に言えば、なるべく観察者であることを意識させないように振る舞い、相手と自然なコミュニケーションを楽しみながら密かにデータ(情報)を収集するというのが参加的観察である。

非参加的観察法というのは、研究者と観察対象(被検者)の立場を区別して、観察対象となっている集団・個人の活動(生活)に参加せずに客観的な観察だけを行う方法のことである。研究法としての参加的観察法と非参加的観察法のどちらが優れているのかは一概に決めることが出来ないが、『観察対象となっている集団・個人の活動』にどれだけ自然に適応できるのかによってどちらの観察法を用いれば良いのかが変わってくる。観察対象となっている集団・個人は観察者の影響を少なからず受けるが、観察対象の生活活動に自然に溶け込めるのであれば、参加的観察のほうが観察対象に与える影響が小さいと言える。反対に、観察対象の生活活動に上手く溶け込めず、研究者がそれらの活動に参加することによって『対象のいつもどおりの行動・状況』が観察できなくなるのであれば、非参加的観察法を実施したほうが良いと言える。

発達心理学や児童心理学の分野では、『子どもの発達(言語)・適応・疾患・人間関係・コミュニケーションスキル』などを調査するために参加的観察法がよく用いられるが、それは観察対象である幼児・児童と一緒に遊びやおしゃべりに参加したほうがより正確かつ効率的に必要な情報(データ)を集めることが出来るからである。反対に、青年期以上の大人が観察対象となっている場合には、研究目的や観察対象によって参加的観察と非参加的観察を使い分けることが多くなる。

また、児童期以上の被検者(研究協力者)には、時間的経済的コスト削減のために『直接的な観察法』ではない『間接的な調査法(アンケート形式の質問紙法など)』が用いられるケースも多い。実際問題として、『思春期以上の個人』が対象の場合には、個人情報やプライバシー権の問題があるので、参加的であっても非参加的であっても日常生活の大部分を直接的に観察することは困難であり、基本的に質問紙法(アンケート方式)でのデータ収集を実施することになる。

心理療法の分野でも、アメリカの精神科医ハリー・スタック・サリヴァン(H.S.Sullivan)が、参加的観察法の方法論を心理療法に応用した『関与しながらの観察』という概念を提起している。H.S.サリヴァンの言う『関与しながらの観察』とは、クライエントの苦悩や葛藤に共感的理解を示す『関与』をしながら、クライエントの表情や態度、状況を客観的に『観察』する余裕を持つという、精神科医の二面性のある治療的態度のことである。

H.S.サリヴァンは関与しながらの観察によって、『心理療法家としての共感的理解(主観性)』『科学的研究者としての診断的観察(客観性)』を両立させることを考えたのであり、診断的面接(精神医学的診断)と治療的面接(心理療法)とが表裏一体のものであることを指摘したのである。



posted by ESDV Words Labo at 11:17 | TrackBack(0) | さ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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