時間制限心理療法(time limited psychotherapy)と短期療法(brief therapy)
心理療法・カウンセリングには、クライエントの各種の心理的問題(症状・ストレス・不適応)を短期間で解決することを目指す『短期療法(brief therapy)』があるが、現代の短期療法には『認知行動療法(CBT)・認知療法・論理療法・解決志向アプローチ・解決構築アプローチ(SFA)・神経言語プログラミング(NLP)』など様々な技法が応用されている。短期療法(ブリーフ・セラピー)は、エビデンス・ベースドな心理療法(科学的統計学的根拠に基づく心理療法)としての特徴を持つが、必ずしも短期間でセッションを終結するわけではなく『相対的に期間が短い心理療法』という意味である。
短期療法のセッションでは『即効性・効率性・信頼性』が重要視されるが、それは仕事・学業や対人関係で忙しい現代社会の中で『心理療法期間の短縮化・確実な臨床的効果・経済的コストの節約』が要請され始めたからである。単純に治療期間・カウンセリング期間が短ければ短いほど良いというわけではないが、クライエントや公的健康保険(市町村)が比較的高額の料金を支払っていることを考えると、出来るだけ短期間・低コストで高い臨床的効果を生み出すことが心理臨床家(カウンセラー)に期待されていると言える。短期療法の開発・進歩に大きな影響を与えたのが、O.ランクとJ.マンが『人間の人生の有限性』を前提にして考案した時間制限心理療法(time limited psychotherapy)である。
精神分析療法が長期化してクライエントの負担が大きくなり過ぎることを憂慮したO.ランクとJ.マンは、カウンセリング期間(心理療法期間)を最大限に短縮化した時間制限心理療法(time limited psychotherapy)を考案した。O.ランクとJ.マンは時間制限心理療法によって『クライエントの時間的・経済的コスト』を削減し、短期間で最大限の効果を発揮することを目指したが、彼らが設定した心理療法の期間は『12回の限定されたセッション回数』であった。クライエントに対しては事前に『何回のセッションで、何月何日に心理療法が終結する』という情報が与えられ、その時間設定に合わせて『具体的なカウンセリング計画』が立てられていくことになる。
時間制限心理療法では、『短期間の心理療法』という時間的制約から過去の記憶(親子関係)などは出来るだけ取り扱わず、現在の症状と生活状況が中心にして話し合われる。また、具体的な問題解決や症状の改善を出来るだけ早く実現するために、来談者中心療法の徹底的傾聴のような『非指示的(受動的)な態度』に終始せず、『指示的な態度(積極的な介入アプローチ)』を取り入れていく。『治療時間の制限』に対応するような『治療目標の制限』を行い、『問題事項の焦点化(フォーカシング)』を積極的に促進していくという特徴もある。クライエントの心理療法に対する希望や現在の心理状態(生活状況)を踏まえながら、『限られたセッション数(12回)』の中で最善の対応策を考えていくのが時間制限心理療法である。

