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2008年05月02日

[双極性障害(躁鬱病, bipolar disorder)の症状と治療]

双極性障害(躁鬱病, bipolar disorder)の症状と治療

気分障害(感情障害)『気分・感情・意欲の過度の変化(不安定性)』を特徴とする精神病であり、精神医学では伝統的に統合失調症と気分障害(うつ病・躁鬱病)を二大内因性精神病と分類している。気分障害(感情障害)にはうつ病と一般に呼ばれる『単極性障害』と躁鬱病(そううつびょう)と呼ばれる『双極性障害』がある。うつ病(大うつ病性障害)は、精神運動抑制の『うつ病エピソード』だけが見られる精神疾患であり、精神運動性が抑制されることによって『憂鬱感・抑うつ感・気分の落ち込み・希死念慮・意欲減退・知的活動性の低下』といったうつ病に特徴的な精神症状が現れる。単極性のうつ病には双極性障害のような急激な気分の好転やハイテンションな高揚感(興奮感)は見られず、急性期を終えると寛解して回復したり慢性的なうつ病エピソードの経過を示すことが多い。

双極性障害(躁鬱病)は『躁病エピソード』『うつ病エピソード』の二相性を持っており、躁病エピソードでは気分(感情)の高揚感や誇大的なハイテンションの行動パターンが見られる。双極性障害では、気分が高揚して精神運動亢進が見られ活発に行動する『躁病エピソード』と気分が落ち込んで精神運動抑制が見られ活動性が衰える『うつ病エピソード』を数ヶ月単位で交互に繰り返すことが多い。躁病エピソードとうつ病エピソードとの間に『気分変化の明確な違い』が見られる双極性障害を『双極性T型障害(双極性障害T型』と呼ぶことがある。躁病とうつ病の病相(エピソード)に明瞭な違いの見られる双極性障害を『双極性T型障害』といい、比較的軽度の軽躁状態とうつ病エピソードが交互に見られる気分障害を『双極性U型障害(双極性障害U型)』という。

躁病エピソードの症状が軽度であり、ハイテンションな誇大的気分による日常生活への支障が小さいものを『双極性U型障害』と呼んでいる。場合によっては入院治療が必要なほどの気分の高まりや精神運動性の亢進(異常なまでのおしゃべりと活動力)が見られる双極性T型障害と比較すると、双極性U型障害は症状変化が安定しており通院での薬物療法と必要に応じたカウンセリング(心理療法)が第一選択になる。双極性のT型・U型に加えて、2年間以上の長期にわたる気分・感情の変動性が見られる慢性的な気分障害は『気分循環性障害』と診断されることがある。

双極性障害の患者は、躁病エピソード期の社会的経済的不利益に十分に留意する必要がある。躁病エピソードで発言する『精神運動亢進(心理・行動の活発性の異常な高まり)』による軽率な発言や無思慮な判断(契約事項の決定)、公的場面(会社・学校)での振る舞いによって『社会的信用の失墜・経済的に大きな損失』を招くリスクがある。また、うつ病相から躁病相に切り替わるときに、希死念慮とネガティブな活動性が高まりやすいリスクがあるので、本人が『抑うつ感が和らいでハイな気分になってきた』という時には自殺企図や自傷行為などに対する十分な警戒と配慮・患者への心理的配慮が必要である。

躁病エピソードの特徴には、『気分の高揚・感情の興奮・思考と行動のスピード感・睡眠欲求の低下・エネルギッシュな行動力・衝動的な行動や買い物・過度の楽観的認知・リスクを無視した無謀な決断・軽率な浮ついた発言や態度・誇大妄想的な自分への自信・ビジネスや宗教への異常な熱中・知覚過敏とイライラ』などが見られ、躁病の精神症状によって『社会的・職業経済的・対人関係的な損失』を受ける恐れが出てくる。

双極性障害の鑑別診断では、物質乱用の薬物嗜癖や副腎皮質ホルモン分泌障害との区別が重視され、統合失調症の急性期における各種の妄想を躁病エピソードと混同しないように注意する必要がある。オイゲン・ブロイラーが定義した統合失調症の特徴の『4つのA』のうち、『観念連合の障害(論理的思考の障害, Association Loosening)』が、双極性障害の躁病症状による『観念奔逸(まとまりなく次々と頭に思い浮かぶことをエネルギッシュに話す症状)』と間違われることもある。

双極性障害は20代前半で発症することが多く、生涯有病率は約1.0%であり男性よりも女性に多く見られる精神疾患である。女性は特に軽度の躁病状態が見られる双極性U型障害の発症率が男性よりも顕著に高くなっているという調査結果がある。一般に遺伝要因(家族集積性)が関与するとされる双極性障害は、単極性障害よりも再発率が高くなる。かつては上流階級や富裕階層・芸術家の人に多い精神疾患として認知されていたが、最近は政治的・経済的階層とは無関係に発症すると考えられている。双極性障害は重度の急性躁病エピソードが見られる場合には入院治療が必要なこともあるが、一般的な医学的治療では『抗精神病薬(メジャートランキライザー)・抗うつ薬・抗躁病薬(炭酸リチウム)』を用いた薬物療法を行っている。

躁病の過度の活動性亢進を抑制するために、炭酸リチウムや抗けいれん薬のカルバマゼピン、バルプロ酸が用いられるが、躁病の症状改善が見られず本人の社会的・経済的不利益が大きいときには安全性が確認されているECT(電気けいれん療法)が実施されることもある。(原因が特定できない)内因性の双極性障害は完全な治癒が難しい精神疾患であり、寛解と再発を繰り返しながら慢性に経過することも多いが、症状の悪化を抑制しながら適切な治療と対人的ケア、カウンセリングを継続していくことで双極性障害の実質的な不利益を減らしていくことが可能である。



posted by ESDV Words Labo at 17:43 | TrackBack(0) | そ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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