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2008年05月15日

[うつ病の自罰感情(自己懲罰, self punishment)と自己卑下(self-downing)]

うつ病の自罰感情(自己懲罰, self punishment)と自己卑下(self-downing)

気分障害(うつ病)の精神運動抑制による精神症状には『憂鬱感・抑うつ感・気分の落ち込み・不安感・焦燥感・興味と喜びの喪失・知的能力(集中力)の低下』などが見られるが、そういった精神症状と合わせて自己否定的な『自罰感情(自己懲罰, self punishment)』の問題が発現することがある。

自分で自分を処罰しようとする『自己懲罰』は健全な精神状態の人でも見られることがあり、その時には自己の罪悪感を軽減しようとする自我防衛機制の役割を果たしている。防衛機制としての自己懲罰(自罰感情)は『自責感・良心の呵責』に非常に近い働きをしており、他人を傷つけたり何か悪いことをしたりした場合に『自己の罪悪感・罪障感』を和らげるために自分で自分を内的に責めて罰そうとするのである。

精神分析的な解釈では肛門期性格に基づく強迫性障害にも『内向的な自罰感情』が見られるとされるが、この自罰感情は肛門期性格のサディズム(嗜虐志向)が自分に内向したものである。フロイトの仮定した肛門期性格は『頑固・几帳面・完全主義・吝嗇(ケチ)』といった特徴を持っており、サディスティックな攻撃性の抑圧がそれらの性格形成の要因となっている。

このサディスティックな攻撃性を自覚してしまうと『罪悪感・自責感』が生まれるので、この攻撃性を防衛するために強迫症状や抑うつ症状へと転換されることになる。『外部に向かう攻撃性』は、うつ病の抑うつ感や強迫性障害の強迫行為へと転換されるのであり、これらの精神症状は『攻撃性の自覚に伴う罪悪感』を防衛する働きをしている。自分が他人を傷つけようとは思っていないと信じ込むために、攻撃性(サディズム)の無意識領域への抑圧が行われ、その内的な攻撃性が抑うつ感や強迫症状に転換されるのである。

(現在では科学的根拠はないとされる)古典的な精神分析のうつ病解釈では『外部に向けられる攻撃性』の防衛として抑うつ症状が生起するということになるが、この攻撃性の防衛に失敗すると自分が他人に攻撃欲求を持っていることが明らかになり『罪悪感・良心の呵責』が発生するのである。本質的には『他人の死(不幸)を願う気持ち』に気づいたときに罪悪感(自責感)が生じるとされているのだが、こういった道徳的に好ましくない欲求を持った自分を罰するために自己懲罰(自罰感情)が生まれてくるのである。

しかし、現在の精神医学においてもうつ病患者の『自分で自分を懲罰しようとする自罰感情』には注意が必要であり、自己否定的な自罰感情が強まって生きることに絶望してしまうと自殺企図のリスクが高くなってしまう。責任感が強く自分に厳しいパーソナリティの人がうつ病に罹患した場合に、『自分はダメな人間である・もう生きている資格がない・会社のみんなや家族に申し訳なくて仕方がない・自分は無能で役に立たない人間になってしまった』というような自己否定の言葉を話しているときには、医療関係者と家族は自殺企図のリスクを警戒する必要がある。

自己懲罰の心理機制は『罪悪感を軽減するために意図的に悪いことをする』という特徴があり、一部の非行・犯罪・物質嗜癖(薬物依存・アルコール依存)などにも関連している。うつ病の精神症状には『自己卑下(self-downing)』という自己評価の著しい低下もあり、これは『自分には生きる価値がない・自分は何をやってもダメだ・俺の人生はもうおしまいだ』といった言葉で表現されるという特徴を持つ。

一般的には、課題(物事)に失敗したり他者との人間関係で傷ついたりした場合に自己卑下の状態に陥るが、うつ病患者のケースでは実際に何も失敗しておらず人間関係の問題もないのに、自分ひとりで自滅的な自己卑下を感じていて希死念慮を高めていることがある。うつ病の心理臨床的な対応においては、自己懲罰と自己卑下という自己評価に関わる問題をどのようにして解決していくかが大きな一つの課題になる。

posted by ESDV Words Labo at 16:10 | TrackBack(0) | し:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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