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2008年05月15日

[カール・ロジャーズの自己理論(self theory)と有機体的人間観]

カール・ロジャーズの自己理論(self theory)と有機体的人間観

標準的なカウンセリング技法として普及したカール・ランサム・ロジャーズ(1902-1987)のクライアント中心療法(来談者中心療法)は、実現傾向(actualizing tendency)に基づく自己理論に支えられている。実現傾向については、カール・ロジャーズと同じ人間性心理学(ヒューマニスティック心理学)に分類されるアブラハム・マズローの『自己実現の項目』で説明したが、自分の潜在的な能力や個性を成長的に発揮していこうとする傾向である。クライアント中心療法がカウンセリングの目的とする『自己受容・自己成長による問題解決』はこの実現傾向に支えられており、成長・健康・発展を可能にする実現傾向の本性を内在した人間観のことを『有機体的人間観』と呼ぶ。

カール・ロジャーズの有機体的な生物観とは、『すべての生物(動物・植物)には成長とへ向かう潜在的可能性』が存在するという基本図式のことである。ロジャーズはこの実現傾向(潜在的可能性)によって、非指示的・受容的な雰囲気の中で適切なカウンセリングの対応が為されれば、『他律的→自律的・破壊的→建設的・病理的→健康的・依存的→自立的』という良い方向への変化が自然に生まれると考えていた。実現傾向とは、生産的な変化・成長的な方向への内発的なモチベーションにもなっているのである。現実のカウンセリングではなかなかロジャーズの自己理論通りの好ましい変化が見られるわけではないが、基本的に自己理論・有機体的人間観というのはポジティブで楽観的な理論なのである。

環境に適応して成長を実現するときに、問題を抱えている人間も『十分に機能する人間』になることができるが、人間が有機体として十分に機能している時には行為・価値の判断基準が『自己の外部』ではなく『自己の内面』に置かれているのである。自己実現とは実現傾向を開花させて潜在的な可能性を発揮することであると同時に、『有機体としての自己』が内発的なモチベーション(動機づけ)に基づいて主体的に自分の人生を生き抜くことなのである。ロジャーズのパーソナリティ理論である自己理論(self theory)は、『有機体としての自己』を個人の内面から現象学的に把握した理論であり、自分を自己規定する『自己概念』と『実際の経験』とが一致した状態を理想の状態と見なしている。

つまり、『私はこのような人間である』というイメージや自己規定で示される自己概念が、現実世界での経験内容と一致しているときに、人間は実現傾向を開花させて『自己成長の実感』を得ることが出来るのである。『私は結婚していて幸せな状況である』という自己概念と、現実の家庭生活での経験が一致していれば『自己一致』の状態となり成長が促進されやすくなるが、反対に、『私は本当は結婚したくなかったのに流れで結婚してしまった状況である』というような自己概念があると、実際の家庭生活での経験が楽しくても『自己不一致(環境不適応)』の状態になって心理的苦痛が起こってくるのである。

『自分で自分をどのように規定しているのか』という自己概念と『現実の自分はどのような経験をしているのか』という経験(有機体的経験)を一致させることが、クライアント中心療法(来談者中心療法)の主要な目的であり、実際のカウンセリングでは共感的理解と無条件の受容によってクライアントの自己一致を促進させるような真摯な傾聴を行っていく。



posted by ESDV Words Labo at 16:54 | TrackBack(0) | し:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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