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2016年01月18日

[マックス・ホルクハイマーの批判理論と“他者性・原罪・永遠性”に基づく良心の復権:3]

マックス・ホルクハイマーの批判理論と“他者性・原罪・永遠性”に基づく良心の復権:3

ホルクハイマーは『宗教はアヘンである』という唯物論のマルクス主義のテーゼ(私的所有権を否定して協同体的な生産体制を構築する経済重視のイデオロギー)も否定して、『隣人愛・博愛・原罪・永遠の魂』などを説くキリスト教的な宗教原理が持つ『他者性・神の永遠性(無限性)』を心情的・部分的に復活させようとした。

その宗教原理の心情的・部分的な復活によって、復活マルクス主義のようなイデオロギーによる個人の支配・管理・抑圧を回避しようとしたのである。

マックス・ホルクハイマーの批判理論と右翼・左翼・リベラリズム(個人主義):2

ホルクハイマーはキリスト教のような宗教を現代で再び真剣に信仰せよというのではなく、『人間の自律性(個人の自由性・人権)』を守るために、自己と他者の相互尊重という宗教的な原理の価値を改めて見直してみるべきだというのである。

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[マックス・ホルクハイマーの批判理論と右翼・左翼・リベラリズム(個人主義):2]

マックス・ホルクハイマーの批判理論と右翼・左翼・リベラリズム(個人主義):2

マックス・ホルクハイマーは、戦後の豊かさと人権意識の中でマルクス主義(共産主義の暴力革命・プロレタリア独裁)の思想的・実践的な有効性がもはや無くなったと結論づけた。そして、マルクス主義が目指した『正義(資源の公正配分)と自由(強制されない個人の解放)の調和』はおよそ不可能であるとした。

マックス・ホルクハイマーの批判理論とマルクス主義・ファシズム:1

マルクス主義は『史的唯物論・階級闘争・共産主義革命』を前提として、啓蒙主義的な理性の向上・実践で『人間の自由な解放』を目指す思想であった。しかし、マルクス主義は個人を抑圧したり虐殺したりするファシズムに転落するリスクを内包しており、ホルクハイマーはその原因として『正義があればあるほど、自由はますます少なくなる』という正義と自由の敵対関係というか正義と自由の両立困難性に着目したのである。

マルクス主義は、社会全体の利益であるとか資源の公正配分であるとか共産党一党体制(プロレタリア独裁)であるとかの反論を許さない『絶対的な正義』を掲げることで、人民を全体主義的かつ人権抑圧的に支配管理するという自己矛盾を呈するに至ったのであった。

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[マックス・ホルクハイマーの批判理論とマルクス主義・ファシズム:1]

マックス・ホルクハイマーの批判理論とマルクス主義・ファシズム:1

フランクフルト学派に分類されるマックス・ホルクハイマー(Max Horkheimer,1895-1973)テオドール・アドルノ(Theodor Ludwig Wiesengrund Adorno, 1903-1969)の批判理論は、マルクス主義の実践的な進歩とファシズム(全体主義)の脅威の回避を目的とするものであった。

T.アドルノはその批判理論(批判哲学)において『同一性‐非同一性の原理』を提示した。アドルノはファシズムを招来するリスクのある同一化(画一化)の権力作用を警戒しながら、『近代的な啓蒙主義の野蛮化・堕落(理論的合理的な結論としての人権弾圧)』を強く批判したのである。

ホルクハイマーとアドルノの批判理論(批判哲学)の限界は、正にフランクフルト学派設立の原点にあるマルクス主義の限界であり、マルクス主義のファシズム的なスターリズムへの転落に対する落胆がそれに追い討ちを掛けた。実験的なロシア社会主義は、結果として個人の非同一性(独自性・多様性)を担保せず、個人を自由に解放するはずであったマルクス主義は、反対に個人の自由・人権を弾圧する理性主義的な根拠になってしまったからである。

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2015年12月01日

[M.マーラーの『分離―個体化理論』と母性剥奪(maternal deprivation)の変数・悪影響の研究:2]

M.マーラーの『分離―個体化理論』と母性剥奪(maternal deprivation)の変数・悪影響の研究:2

精神科医のJ.ロバートソン(J.Robertson)は、母親から分離された乳児であっても、特定の養育者があてがわれない児童養護施設(乳児院)・病院ではなく、母親代わりとなる養育者があてがわれてケアする『養子縁組み(他の家庭に預けられる)のケース』であれば、急性反応障害は発症しないとしている。

M.ラター(M.Rutter)らの母性剥奪(maternal deprivation)の変数(構成要素)の研究:1

非行行為や暴力的な言動、反社会的な傾向が目立つ子供の『行為障害』の原因も、母親との分離そのものではなく、分離以前の家庭環境の悪さや家族間の葛藤にあることのほうが多いとされている。

サイコパス(精神病質)やソシオパス(社会病質)と呼ばれる良心・倫理観・情性が欠如した『反社会的パーソナリティー障害』の原因も、母親との分離そのものではなく、発達早期における『中枢神経系の発達障害・脳内ホルモン分泌障害+母親との情緒的な関係(愛着)の形成障害』が原因になっているのではないかと推測されている。

母性剥奪(maternal deprivation)の概念を構成している、複雑で多様な変数の要因には以下のようなものがある。

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[M.ラター(M.Rutter)らの母性剥奪(maternal deprivation)の変数(構成要素)の研究:1]

M.ラター(M.Rutter)らの母性剥奪(maternal deprivation)の変数(構成要素)の研究:1

発達障害(自閉症スペクトラム)の研究で知られるアメリカの精神科医M.ラター(M.Rutter)らは、母性剥奪(maternal deprivation)には複数の異なる心理的メカニズムが影響しており、それぞれのメカニズムに対応する原因が存在すると主張した。

母親に対する愛着(アタッチメント)が形成された乳幼児期の子供が、母親から強制的に引き離されると対象喪失(object loss)にも似た母性剥奪による悪影響が起こってくる。この母性剥奪は一元的な心理体験ではなく、複数の変数(構成要素)から構成された『多元的な心理体験』なのである。

母親との『分離(separation)』そのものの変数(構成要素)には、以下のようなものがある。

分離の原因

分離期間の養育方法やその性質

乳幼児の年齢と成熟の水準

分離の前と後の家族関係の性質の変化

乳幼児の気質と分離以前のエピソード

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2015年11月22日

[ジョン・ボウルビィ(John Bowlby)の『母性剥奪(maternal deprivation)』の研究とV.スミルノフの『剥奪症候群』]

ジョン・ボウルビィ(John Bowlby)の『母性剥奪(maternal deprivation)』の研究とV.スミルノフの『剥奪症候群』

イギリスの児童精神科医・精神分析家のジョン・ボウルビィ(John Bowlby,1907-1990)は、母性的養育のある温かい母親の接し方・環境が剥奪された場合に、乳幼児の心身がどのような反応を示すかという『母性剥奪(maternal deprivation)』の研究を行ったことで知られる。

ジョン・ボウルビィの母性剥奪による乳幼児の心身に与える影響の研究成果は、“Maternal Care and Mental Health, 1951”というモノグラフにまとめられているが、ボウルビィは精神的健康の基盤に『親密で持続性のある相互に満足感と安心感(幸福感)の得られる母子関係』というものを想定していた。

現代では男女平等や父親の育児参加の観点から、『母性剥奪(母親の愛情・保護の剥奪)』だけではなく『父性剥奪』も問題にすべきではないかとの異論も出ている。だが現時点では(元々母親と比較して父親が育児に参加する度合いが低いこともあり)、乳幼児期の子供の心身に対して『父親の愛情・保護の喪失』が大きな影響を与えるという実証的研究は出されていない。

母性的養育の剥奪についての主な研究方法には以下の3つがある。

1.児童養護施設・病院・養子などで、母親から隔離されている乳幼児の心身発達の観察。

2.不適応あるいは反社会的な精神的問題を抱えている青少年・成人の生活歴(養育環境)を遡っていく遡行的研究

3.母性剥奪の成育歴を持つ児童の縦断的な追跡研究

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[母性抑うつ(maternal depression)・育児不安]

母性抑うつ(maternal depression)・育児不安

初産の場合には、出産後間もない母親は、女性ホルモン増加の体内ホルモン環境の激変や不慣れな育児のストレス・疲労感、夫婦関係(夫の育児への参加度)の問題などによって、『一過性の抑うつ状態』を高い確率で経験しやすくなる。

それまでの生活環境や役割行動が激変する結婚後にも『マリッジ・ブルー(marriage blue)』と呼ばれる一過性の抑うつ状態が生じやすいことが知られているが、産後の抑うつ状態や悲観的な認知に囚われた状態のことを『マタニティー・ブルー(maternity blue)』と呼ぶこともある。

出産後の母親のうつ状態が遷延化して実質的にうつ病に等しいような病態を示したり、育児不安が強くなりすぎて育児・家事が手につかなくなって不適応を起こしやすくなったりするが、こういった産後・産褥期の抑うつ状態のことを『母性抑うつ(maternal depression)』といっている。

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2015年05月13日

[ボーダーライン・カップル(borderline couple)2:共依存的‐自己愛的な危うい関係性]

ボーダーライン・カップル(borderline couple)2:共依存的‐自己愛的な危うい関係性

ボーダーライン・カップルを題材とした女性精神分析家の著書に、J.ラハカー(J.Lachkar)『自己愛/ボーダーライン・カップル』といった家族療法(夫婦療法・夫婦セラピー)の著書があるが、この著書ではBPDの人同士のカップルは上手くいかないことが事例を元にして説明されている。

片方がパーソナリティー障害のないメンタルケアをしてくれる健常者であるか、自分を特別視して自己評価が高い自己愛性パーソナリティー障害の人であれば、そのカップルは上手くいく確率が上がるのだという。

ボーダーライン・カップル(borderline couple)1:境界性パーソナリティー障害のパートナーを持つ人

ボーダーライン・カップルの関係性が安定している時というのは、BPDの人に対してBPDではない健常者の人が『無条件の愛情・関心・保護』を与えて見捨てられ不安を感じないようにしている時である。だから、夫婦だけの愛情関係に閉じこもっていられなくなる『子供の誕生(赤ちゃんの誕生)』があると、夫(妻)の愛情や関心、ケアが赤ちゃんのほうに奪われてしまったという嫉妬感や被害感から、急速に『相手への評価の低下・見捨てられ不安の高まり・衝動的で暴力的な行為』が増えてしまうこともある。

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[ボーダーライン・カップル(borderline couple)1:境界性パーソナリティー障害のパートナーを持つ人]

ボーダーライン・カップル(borderline couple)1:境界性パーソナリティー障害のパートナーを持つ人

自己アイデンティティが拡散して、自他の境界線が曖昧になり親しい他者に過度に依存する『境界性パーソナリティー障害(borderline personality disorder:BPD)』は、周囲にいる家族や恋人、親友を情緒的に振り回したり傷つけたりすることが多い。

境界性パーソナリティー障害(BPD)は『関係性・依存性の病理』といった側面を濃厚に持っていて、夫婦(親密な恋人)のどちらか一方が境界性パーソナリティー障害(BPD)であるカップルのことを『ボーダーライン・カップル(borderline couple)』と呼んでいる。

ボーダーライン・カップルは、様々な情緒的・要求的・依存的なトラブルを繰り返して悪循環を繰り返す『共依存(co-dependence)』の特徴を持ちながらも、健常なパートナーのほうがBPDのパートナーに合わせてケアすることで長期間にわたって、ある種の安定的な関係を維持できることも多い。

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2015年04月14日

[ジョン・ボウルビィ(John Bowlby,1907-1990)のモーニング(喪)の四段階論と対象喪失の受容と回復]

ジョン・ボウルビィ(John Bowlby,1907-1990)のモーニング(喪)の四段階論と対象喪失の受容と回復

モーニングの心的プロセスが、愛情・依存の対象と別れる死別だった場合には特に『喪(喪の仕事)』と呼ばれ、生き別れだった場合には『悲哀(悲哀の仕事)』と呼ばれることがある。モーニングの喪の仕事の心的過程では、悲哀や苦痛だけではなく、怒り、絶望、後悔、未練、執着、償い、謝罪などさまざまな感情や気分、訴えが綯い交ぜ(ないまぜ)になるのである。

外的対象喪失と内的対象喪失:モーニングワーク(喪の仕事)

イギリスの精神分析家ジョン・ボウルビィ(John Bowlby,1907-1990)は、愛着(attachment)の研究で知られるが、対象喪失の後に起こるモーニングの心的過程を『4段階』に分けて理論化している。J.ボウルビィは対象喪失と相関した一連の心的過程を『モーニング(mourning)』と定義し、悲哀の心的過程の中で体感する落胆・絶望・苦悩の情緒については『悲嘆(grief)』と呼んだ。

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2015年04月09日

[T.ホルムスとR.H.レイの『ライフイベントによるストレスの強さ』の一覧表と対象喪失]

T.ホルムスとR.H.レイの『ライフイベントによるストレスの強さ』の一覧表と対象喪失

アメリカの精神科医であるT.ホルムス(T.Hoimues)R.H.レイ(R.H.Rahe)は、『ライフイベント(人生の重要な出来事)とストレスの強度との相関関係』を数値化したストレス心理学の研究で知られている。

愛情・愛着や依存の対象をさまざまな理由で失う体験のことを『対象喪失(object loss)』という。T.ホルムスとR.H.レイのライフイベントに基づくストレス研究でも、『配偶者(近親者)の死や離婚・離別』がもっとも強いストレス要因とされており、人間にとってもっとも強いストレスを与えるのは『対象喪失に関わるライフイベント』だと考えられている。

T.ホルムスとR.H.レイが調査して整理した『ライフイベントによるストレスの強さ(変化に適応するためのストレスの強さ)』の一覧表は、以下のようになっている。

ストレスは今までの生活状況や心理状態を大きく変えてしまう『生活上・関係上・義務上の変化』によって生じるので、一般的には悪い変化とは考えられていない『結婚・昇進・引越し・子供の自立(空の巣症候群)』なども強いストレスになることがあるとされている。

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2014年08月27日

[ジョン・ボウルビィ(John Bowlby)]

ジョン・ボウルビィ(John Bowlby)

イギリスの児童精神科医・精神分析家のジョン・ボウルビィ(John Bowlby,1907-1990)は、精神分析の訓練を受けているが、精神医学の研究を動物行動学(エソロジー)の観点から行った人物でもある。ジョン・ボウルビィに対して教育分析(スーパービジョン)や精神分析の臨床の指導を行ったのは、メラニー・クラインアンナ・フロイトであった。

J.ボウルビィは初め、英国独立学派を創設して対象関係論を論じていたメラニー・クラインに教えを受けて、その後に自我心理学のアンナ・フロイトに師事している。ケンブリッジ大学で心理学などを学び、ユニヴァーシティカレッジ病院で医学を学んで、1933年に医師免許を取得して精神科医としてのキャリアを歩み始めた。

モーズレイ病院の精神科で臨床を行いながら、ジークムント・フロイトの精神分析やメラニー・クラインの児童分析に発達心理学的な視点からの関心を持つようになり、1936年にロンドン児童相談所で精神分析家としての経験を積んだ。1937年に精神分析家の資格を取得して、M.クラインやアンナ・フロイトに教えを受けたのである。第二次世界大戦中に軍医として活動しながら、タビストック・クリニックに児童精神分析部門を立ち上げる業績を残している。

1945年頃には、タビストック・クリニックの副所長に就任しているが、ジョン・ボウルビィの有名な『愛着理論(attachment theory)』は、1950年代のイタリアにあった孤児院・乳児院で起こった『施設病(ホスピタリズム)』の実態調査・実証研究に基づいて提唱されたものであった。

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[マレー・ボーエン(Murray Bowen)の多世代派家族療法]

マレー・ボーエン(Murray Bowen)の多世代派家族療法

アメリカの精神科医・家族療法家であるマレー・ボーエン(Murray Bowen,1913-1990)は、『現代的な核家族の精神分析』ではなく『多世代家族(直系家族)の精神分析』を専門にしていたセラピストである。M.ボーエンは1950年代の家族療法の黎明期に活躍したセラピストであり、ボーエンの家族システム論を前提にした家族療法は『多世代派家族療法』と呼ばれている。

M.ボーエンははじめ統合失調症(schizophrenia)の患者とその家族との歴史的な関係性を研究する中で、多世代派家族療法のシステム論を形成していった。家族成員のそれぞれが相互に影響を与え合いながら『一つの家族という機能的な集団(=システム)』を作り上げているという前提がある。そして、家族で共有されている過去の歴史も、家族メンバーの行動・心理状態に大きな影響を及ぼしているという仮説である。

家族のメンバーは『感情の単位』でもあるが、家族システムはそれぞれの家族メンバーの感情・要求を基調とした『力関係(相互作用)』によって成り立っていると考えられている。家族のメンバーにはそれぞれに役割・立場があるのだが、誰かが身体や精神の疾患によってその役割(立場に応じた責任)を果たせなくなった時には、『他の家族メンバーの補償的・代替的な行為』によってカバーされることになる。家族はそういった支え合いや代理行為といった相互作用によって、感情システムとしての家族システムを確立して維持しているのである。

ボーエンの多世代派家族療法では、その家族に代々受け継がれてきた『精神的な問題点・家族の秘密・コミュニケーションのルール・力関係のダイナミックな影響』などを話題の対象にして、家族にある『慢性的な不安(chronic anxiety)』をできるだけ解消しようとする。

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2013年06月07日

[ホワイト精神分析研究所(W.W.White Psychoanalytic Institute)]

ホワイト精神分析研究所(W.W.White Psychoanalytic Institute)

ジークムント・フロイトが創始した『正統派精神分析(自我心理学の精神分析)』に、社会科学の知見や文化的歴史的な視点を付け加えたのが『新フロイト派』であり、新フロイト派に属する分析家のことを『ネオフロイディアン』と呼ぶこともある。ニューヨーク市にある精神分析の訓練施設・研究所である『ホワイト精神分析研究所(W.W.White Psychoanalytic Institute)』は、新フロイト派を養成する研究所として知られる。

ホワイト精神分析研究所を創設したのは、H.S.サリヴァン(H.S.Sullivan)エーリッヒ・フロム(E.Fromm)、フロム=ライヒマン(F.Fromm-Reichmann)、C.トンプソン(C.Thompson)といった代表的なネオフロイディアンである。ホワイト精神分析研究所では、正統派精神分析のリビドー発達論や汎性欲論、幼児期トラウマ仮説(幼児期記憶の転移)などに囚われずに、『生物学的要素以外の社会的・文化的な要素』を重視した精神分析を実施したり訓練したりしていた。

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[ホワイトボックスの原理(white-box principle)]

ホワイトボックスの原理(white-box principle)

あるシステムの内部の具体的な仕組みや構造が全く分からないために、その仕組みや構造を分析することすらできない状態及びその原理のことを『ブラックボックスの原理(black-box principle)』と呼ぶことは良く知られている。現代のような技術文明社会は、そのコンピューターや電子機器(通信機器)、自動車(ハイブリッドカー)をマニュアル通りに操作することはできるけど、具体的な内部の構造や仕組みは良く分からないし、ゼロから自分でそれを作り上げて再現することなどとてもできないという『ブラックボックスの原理』に満ちている社会でもある。

しかし、大多数の人にとってコンピューターや電子機械、通信端末の内部構造やその仕組みがブラックボックスであるとは言っても、実際にはどこかの会社や専門家、エンジニアがその商品の具体的な仕組みや構造を理解して工場でシステマチックに生産しているのであり、視点を変えればこれらの商品は『ホワイトボックス』だと解釈することもできる。

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2013年05月17日

[ホリスティック・カウンセリング(holistic counseling)と全人的医療・包括的医療:2]

ホリスティック・カウンセリング(holistic counseling)と全人的医療・包括的医療:2

『前回の全人的医療・ホリスティックカウンセリング』の記事の続きになります。人間の精神や内面、生き方、環境などの要素が複雑に絡み合っている『精神疾患・心身症・慢性疾患・不定愁訴・がん・ストレス性の疾患』に対しては、人間の身体・部分だけを対象とする要素還元主義的な近代西洋医学では十分な対応をすることができないことが多い。『病気だけを見て人間全体(患者自身)を見てくれない』という近代医学の批判に応えるために実践と改良が重ねられているのが、『全人的医療・包括的医療(ホリスティック・メディスン)』である。

近代的な西洋医学は、エビデンスベースドな医療(科学的根拠のベースを持つ医療)を理想としているが、全人的医療(ホリスティック医療)では患者中心の患者全体の存在や心情、環境までを包括するような医療を理想としており、その世界観は漢方・中医学といった『東洋医学』から強い影響を受けている。

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[ホリスティック・カウンセリング(holistic counseling)と全人的医療・包括的医療:1]

ホリスティック・カウンセリング(holistic counseling)と全人的医療・包括的医療:1

近代科学の世界観や方法論を参照する『近代西欧医学』に対する典型的な批判として、『病気は見るが人間(患者)を見ない』とか『部分を分析するが全体を洞察しない』『身体の器質的な異常だけを見て精神(内面)の問題を見てくれない』とかいった批判がある。

近代的な西洋医学は長らく『要素還元主義・機械論的人間観・専門医重視』によって研究と臨床が進められてきたため、人間の器官や病気を身体的な部分に還元してその異常を調べ、その異常を修復するための専門的な治療(投薬・手術)だけに特化するというシステムが確立されてしまった。つい最近まで、大学の医学部が教育しようとしてきた医師は、『それぞれの専門に深く通じた専門医』であり、医学部で医師免許を取得した後に『専門医制度の資格』を更に取得するという自己研鑽を奨励してきた。

言い換えれば『専門以外の臓器・病気・訴えに上手く対応できない医師(専門外の患者は見たくないし責任を持てないという医師)』が増えてきたという状況があり、その反動として患者の全体像や精神性も見渡せる『総合医・かかりつけ医』が求められるようになってきている。

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[ホームワーク・アサインメント(homework assignment)とカウンセリング]

ホームワーク・アサインメント(homework assignment)とカウンセリング

ホームワークとは自宅でする宿題のことであるが、カウンセリング(心理療法)のセッションでもその後に自分でするべき宿題が出されることがある。カウンセリングのセッション(心理面接)で出される『クライエントが自分ですべき宿題・課題』のことを、『ホームワーク・アサインメント(homework assignment)』と呼んでいる。ホームワーク・アサインメントは、カウンセリングや心理療法における段階的な『セルフトレーニング(自己訓練)の処方箋』としての役目も果たすが、次のような意味を持っている。

1.カウンセリングの見立てにおける仮説の検証と効果の確認

カウンセリングではクライアントの主訴や問題に対して、どのような心理的・環境的な原因によってその問題(悩み)が引き起こされているのかを推測し、その仮説に基づいて『問題あるいは原因を解決するためのホームワーク・アサインメント』を提示するのである。

パニック障害で電車やバスに乗れないというクライアントに対して、まずは電車(バス)に乗るために駅(バス停)まで歩いて行き、その時の心理的な緊張感・不安感を体験して記録しておくというホームワークを出したりする。段階的に電車・バスに乗る距離を増やしていき、パニック発作が起きない程度の緊張感・不安感の苦痛に慣れさせていくという系統的脱感作法のホームワーク・アサインメントにつなげていくのである。

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[ポリゴン(polygon)と3次元コンピューターグラフィックス]

ポリゴン(polygon)と3次元コンピューターグラフィックス

ポリゴン(polygon)は英語で『多角形』を意味する単語だが、ゲームに登場するキャラクターの『3Dの立体的表現』のことをポリゴンと呼ぶこともある。ゲームやイラストなどの『3次元コンピュータグラフィックス』を特にポリゴンという言葉で表現することが多くなっている。

具体的には、三角形や四角形(五角形以上も使われる)の組み合わせによって、オブジェクト(対象・人物)を立体的に表現したものがポリゴンであるが、3Dの立体的表現を構成している『三角形・四角形の各要素』のことを指してポリゴンということもある。 度数分布を棒グラフの柱状の形で示したものが『ヒストグラム』であるが、このヒストグラムの柱の頭を直線で結んだ多角形のことを『ポリゴン』と呼ぶこともあり、このヒストグラムの柱頭を結んだ多角形は主に『記述統計学』の分野で用いられてきた。

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2013年05月09日

[ポリオ(polio)]

ポリオ(polio)

ポリオ(polio)は正式名称を急性灰白髄炎(きゅうせいかいはくずいえん,poliomyelitis)といい、ピコルナウイルス科エンテロウイルス属に分類されるポリオウイルスの感染症である。ポリオは一般に『脊髄性小児麻痺(小児麻痺)』と呼ばれる疾患だが、5歳以下の小児が発症者全体に占める割合が9割以上となっており、基本的には子供が罹患する感染症の疾患である。

ポリオは夏から秋にかけての季節に感染リスクが高くなる。成人にも感染例はあるがその発症率は極めて低い。ポリオウイルスによって脊髄が炎症を起こすと、手足が麻痺するという症状が残るが、脳性麻痺とは異なり脳機能や知能そのものは障害されないという特徴がある。1960年代以前には毎年かなりの数のポリオ(脊髄性小児麻痺)が発生していたが、1961年に不活化ワクチンの定期予防接種が開始されてからは激減した。日本では1980年に野生株によるポリオ感染が無くなったと考えられており、1980年以降はポリオの自然感染の症例は一件も確認されていない。

1980年以降は、経口生ポリオワクチンの定期接種による感染例しか報告されておらず、そのために『ワクチン接種を初めからしない』という親の増加が見られていたりもする。日本国内ではポリオウイルスの野生株による『麻痺性ポリオ』の患者は1980年以後は一人も出ていないが、海外渡航時にポリオ感染のリスクがあることなどから、厚生労働省はポリオワクチンの接種を勧めている。

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